「フットボール」というスポーツはなかなか奥深い。世界を見れば、さまざまなスタイルの「フットボール」がある。たとえば、英国でフットボールといえば主にサッカーかラグビーのことだが、米国では、日本で言うところのアメリカンフットボールがフットボールだ。
アメフトとサッカーとなると、同じフットボールとはいえ相違がかなり目立つようだが、このたび、米国人アメフト監督テッド・ラッソ氏がサッカーのイングランドプレミアリーグの強豪チーム「トッテナム・ホットスパーズ」の監督に就任したという仰天ニュースが筆者の耳に飛び込んできた。
冗談か、コメディ映画のような話だと思われるかもしれないが、そうではない。じつは米国でプレミアリーグを放送するテレビ局NBCが作ったCMである。動画サイトのYouTube(ユーチューブ)でも大きな反響を呼んでいる。
タックルやオフサイド、得点制度、パス、手の使用…もう、チンプンカンプン
俳優のジェイソン・サダイキスが演じるラッソ監督は当初、「どこに行ってもフットボールはフットボールだ」と自信満々だった。しかし、就任会見では「(フットボールに)芝生にシューズ、それにヘルメットが必要なことは変わらない」「ゲームには勝つか負けるかしかない」「勝利を積み重ね、プレーオフ進出を目指す」と話すなど、アソシエーションフットボールの基本知識がゼロなことを露呈してしまった。
練習をはじめれば、タックルやオフサイド、得点制度、パス、手の使用などについて、カルチャーギャップに悩まされた。トッテナムのスター選手、ギャレス・ベイルを見て「彼はイングランド人か。なにウェールズ? この国にはいくつ国があるんだ」と頭を悩ませたこともあった。
次第に疲労の色を濃くしていくラッソ監督だったが、それでもインタビューで「私は日々学んでいる。ここで戦い抜くつもりだ」と意欲を見せていたときに、1本の電話がかかってきて――。英国のア式フットボール最高峰のプレミアリーグは8月17日(2013年)に開幕するが、残念ながらそこでラッソ監督の活躍する姿は見られないようである。
ボンド柳生