「ナチス憲法の手口を学んだらどうかね」と発言し国の内外から批判を受けている麻生太郎副総理兼財務相が、釈明して発言を撤回した。「悪しき例としてあげた」というのだが、それでは「悪しき例を学んだら」となり矛盾する。かつて漢字の読めない総理と揶揄され、今度は日本語の表現能力、事実誤認が問われている副総理となった。
ユダヤ人人権団体「ナチス引き合いに出した理由が不可解」
麻生の問題発言があったのは7月29日(2013年)夜に開かれた国家基本問題研究所(桜井よしこ理事長)主催のシンポジウムで、麻生はパネリストとして発言した。「今回の憲法の話も狂騒のなかでやって欲しくない」とここまでは問題なかったが、この後に「憲法はある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づいていないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」と言いだした
当然、国の内外から批判の大合唱となった。米国のユダヤ人人権団体は存在しないナチス憲法などと言ったうえ、「なぜナチスを例えに使ったのか」と猛反発している。中国、韓国も批判する。
麻生はナチスを引き合いに出したことについて、「悪しき例としてあげた」と釈明し、「誤解を招く結果となったので撤回したい」と述べたが、新聞報道によるとユダヤ人人権団体は「ナチスを引き合いに出した理由が不可解のままだ」と納得していない。
全権委任法で近代的なワイマール憲法を消滅
コメンテーターの与良正男(毎日新聞論説委員)もこう批判する。「悪しき例としてナチスをあげたというが、悪しき例を『手口に学だら』とは言わないですよ。そこが最大のポイント。それに歴史的事実が全く違う。ナチス憲法なんてありません。(ワイマール憲法下で誕生した)ナチス政権はワイマール憲法を事実上消滅させるような全権委任法を作った。それでワイマール憲法は消滅したんだけれども、ナチス憲法は作らなかった。誰も知らないうちに変わったというのは事実誤認です。その『手口を学んだら』というのだから、誰も知らないうちに憲法を変えるのが正しいと言っているように聞こえます」
当然、2日から始まった国会で野党から厳しい質疑が飛び出すだろうが、安倍政権の要の一人として持つかどうか??