たぎる情熱にほとばしるロマン!古き良きマッチョな日本男児が好きか嫌いかによって評価が割れそうなアニメ映画ですが、一つだけ確実に言えることは大人向けの作品です。ここ3週、金曜ロードショーでジブリ作品が続き、すっかりジブリ脳になって劇場にやってきた子供たちのポカン顔は気の毒でした。
5年ぶりの宮崎駿作品は、実在した2人の人物を融合させたハイブリッド主人公という触れ込みで、それだけでも期待感は高まるばかり。小説家・堀辰雄と飛行機技師・堀越二郎がどう重なるのか。そして、小説「風立ちぬ」未読のエセ文学少女としては、ストーリーを理解できなかったらという懸念もぬぐえない。
うらやましくて腹立たしいあの時代とあんな生き方
幼年期から「美しい飛行機」を追求してきた少年・二郎。イタリアの天才技師に憧れる二郎にとって、飛行機は夢だ。その美しい飛行機を実現するべく、二郎は東大を出て三菱重工に入社し、戦闘機の設計に携わるようになる。ピカいちのセンスで周囲を巻き込む二郎だが、いつだってお客さまは「海軍」である。人殺しの道具を作りたいわけではないけれど、美しい飛行機の実現という目標のためには、付けねばならない折り合いもある。そして、非力なこの国を産業(というか機械)の力で守ってみせる、豊かにしてみせるという覚悟も二郎は持っている。だから零戦の開発に力を注ぐ。
そうか、宮崎駿は「自分たちがこの国を背負う」という強烈な自負が当たり前にあった世代なのだよなぁと感じ入っていたら、目から水が…。ワークライフバランスどころか、ワークワークワークな若手技術者たちの熱気が伝わる。私生活も健康も投げ打っても、成し遂げたいことがあるという潔さが、うらやましくもあり、腹立たしくもあり。