安倍首相『本性』いつ現す!? 参院選大勝で頭もたげる「幕末の志士気取り」

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「長州人が尊敬する吉田松陰先生は『千万人といえどもわれ往かん』そういう人物が必要なのだ」

<「私の地元は山口県で、長州人が尊敬する吉田松陰先生は、よく孟子の言葉引用して『千万人といえどもわれ往かん』といいました。『これは正しい』という信念さえもっていれば、世の中から袋叩きになって、長い政治生命を保ちえないとしても、それを貫きとおさないとならない、そういう人物が必要なのだ、と現在のような激動期にはとくに痛切に感じますね」>

   これは『ニューズウイーク日本版』が紹介している、2003年に安倍晋三氏が歴史学者の中西輝政氏と対談した際の言葉である。ニューズウイークは安倍が自らを激動期に活躍する志士のように思い込んでいるとすれば、気負いすぎではないかと危惧している。

   こうした考えの安倍首相が、第2次政権発足後は日本経済の再浮揚に集中しているのは、安定した暮らしがなければ、国民は彼の唱える「誇りの回復」などに見向きもしないことを学んだからだろうと書く。

   だが、参院選で大勝してねじれが解消すれば(この記事が書かれたのは参院選の投票日前)、状況は変わり安倍が『本性』を現すと見る。<長州出身の幕末の志士、高杉晋作から『晋』の字を受け継いだと気負う安倍は、経済の回復をてこに『美しい日本』『戦後レジームからの脱却』の実現に動き出すだろう>(ニューズウイーク)

『消費税8%』党内事情、財務省圧力、G8サミット要請…秋に「増税やむなし」決断

   7月21日(2013年)に投票が行われた23回参議院選挙は、投票率が前回よりも5.31ポイント下がって52.61%という「戦後3番目」に低いものだった。自民党が65議席(選挙区47議席、比例区18議席)を獲得して第1党に返り咲き、公明党の11議席(選挙区4議席、比例区7議席)と合わせて過半数を上回る135となり、参議院における「ねじれ」は解消した。

   一方の野党は、民主党が結党以来最少となる17議席(選挙区10議席、比例区7議席)と惨敗。日本維新の会・みんなの党も議席は伸びず、共産党だけが5議席増の8議席と躍進した。

   当然ながら、両院で圧倒的多数を占めた安倍首相の動向に注目が集まっている。来年の消費税3%引き上げはあるのか。8月15日の靖国公式参拝はするのか。憲法96条を改正して憲法9条を含めた全面的な憲法改正に踏み込むのか。尖閣諸島問題で話し合いさえできない中国との関係はどうなるのか。

   まずは消費税問題。『週刊文春』で安倍首相の経済ブレーンである浜田宏一エール大学名誉教授と本田悦朗静岡県立大教授が、ともに「一気にプラス三%となる増税は慎重にすべき」だとしている。さらに本田教授はこう話す。

<「いま、アベノミクスで希望が見えつつありますが、本当に一気にプラス三%となる増税に耐えられるのかは疑問です。まだ、駆け込み需要も含めた見せかけの数字に過ぎない。
   日本は財政再建を真剣にやっているんだと内外に示しつつ、よくなりつつある景気の中折れを防ぐには、消費税を一%ずつ、五年間かけて上げていくというのが一番現実的です」>

   だが、もしこれをやるとなると、「新法」を制定しなくてはならないそうである。そうなれば、去年苦労して3党合意をまとめた谷垣禎一総裁(当時)をはじめ、派閥領袖クラスがこぞって猛反発することが予想され、ことはそう簡単ではないという。

   『週刊現代』はモスクワで開かれたG20 (主要20か国・地域財務相中央銀行総裁会議)に出席した麻生太郎副総理兼財務相が、「消費税増税は予定通りやりたい」と宣言したことで、増税を「国際公約」にしたことを重視する。政治ジャーナリスト山田惠資氏がこう読む。

<「消費税増税に関しては、安倍首相が前回のG8サミットでドイツのメルケル首相から注文を受け、OECD(経済協力開発機構)は日本に消費税の引き上げを求めています。さらに、財務省も圧力をかけており、結局安倍首相は、『消費税増税やむなし』と決断することになるでしょう」>

   個人的には、幕末の志士気取りの安倍首相は増税やむなしに傾くのではないかと思う。

『憲法改正』急がないが必ずやる…シナリオは2016年衆参ダブル選挙に大勝して着手

   次に靖国参拝問題。『週刊文春』は<「参拝の時期に関しては総理自らが適切に判断されるでしょう」(安倍側近の衛藤晟一首相補佐官)>と、判断保留している。『週刊新潮』もさる官邸関係者にこういわせている。

<「彼は、2016年夏の衆参ダブル選挙で勝利した上での長期政権を目指しています。したがって、一歩間違えば命取りになりかねない『歴史問題』には、16年まで本格的に手をつけるつもりはありません」>

   だが、第1次政権時代、靖国参拝できなかったことは「痛恨の極み」と常々いっている安倍首相だから、政治ジャーナリストの山村明義氏のように<「ラストチャンスは、10月17日から20日までの秋の例大祭です」>(週刊新潮)と見る向きもあるようだ。週刊新潮はこの問題で悩む安倍首相をこう評している。

<真夏の選挙戦を制した安倍総理だが、靖国参拝に腐心し、身悶える、寝苦しい夏の夜はまだ続きそうだ>

   憲法改正については、いまのところ公明党が慎重である。週刊新潮で政治評論家の浅川博忠氏がこう解説する。<「創価学会の中でも、憲法九条の改正を絶対許さないという立場を取っているのが『婦人部』です。公明党は、護憲ではなく『加憲』という立場ですが、その中身は環境やプライバシーに関するものばかり」>

   安倍自民は公明党が改憲に賛同しない場合は、改憲に前向きな維新やみんなの党と手を組めばいいから、公明党は苦しい立場に追い込まれるかもしれないと週刊新潮は見ている。

   週刊現代も<首相は周囲に、『憲法については急がない』などと話しているという。だがその意味は『急がない』だけで、やる気は十分ということでもある>と、任期中にやってくる可能性はあると見ている。

   週刊現代は安倍首相は7月中にも東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働申請に踏み切ろうとしていると書いているが、原発が次々に再稼働されていくのは間違いないだろう。

   戦後最悪といわれる中国・韓国との関係については、ニューズウイークが「安倍外交、半年間の通信簿」でこう書いている。<中国政府は東シナ海における覇権の拡大という長期的目標の追求を続け、安倍はそれを阻止する手を打てずにいる。日中双方に譲歩する気がなく、それぞれの立場に固執するばかりだ。さらに安倍政権は、いわゆる尖閣防衛について、アメリカからこれまで以上に踏み込んだ発言を引き出せずにいる>

   日韓関係もお先真っ暗な状態だから、評価はCと厳しい。

アントニオ猪木議員「総額2億円の歳費」「愛人同伴の選挙戦」それで当選させた有権者

   安倍首相関連はこれくらいにして、参院選のこぼれ話を拾ってみよう。週刊新潮は、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が9月29日に投開票される堺市長選で負けるようなことがあれば、次はないと報じている。この選挙では橋下市長の政策の中核である「大阪都構想」が争点になるからだ。だが、現職の竹山修身市長は「大阪都構想」に反対の立場をとっているため、引きずり下ろさなければならないのだが、この時点で候補者さえ決まっていない「異常事態」なのだそうである。

   東国原英夫氏の擁立も検討されているというが、敗色濃厚のようだ。もう一人の共同代表・石原慎太郎氏がトボトボと東京・広尾の路上を歩いている写真が週刊新潮に載っている。選挙戦のラスト3日間、1度も街頭に出なかった石原だが、広尾の病院で診察を受けていたという。この姿から見ても、代表の座を退くのは時間の問題だろう。

   その維新から立候補し、当選を果たした『燃える闘魂』アントニオ猪木氏が24年ぶりに永田町に戻ってくる。70という年齢、政策らしきものが何もないこのタレントに、年間2400万円と1000万円を超える文書通信交通滞在費が支給され、6年間で収入は総額2億円を超えると週刊新潮は書き、「それも国民の度量か」と嘆息している。同感ですな。

   週刊文春は猪木氏の妻子はアメリカにいて、選挙期間中は「愛人」同伴だったと報じている。この人、いまもスキャンダルの宝庫である。

   週刊文春でブラック企業と批判キャンペーンされたワタミ前会長の渡辺美樹氏は、自民党の全国比例18議席のうちの16番目で何とか当選を果たした。その渡辺、よほど週刊文春が憎いのか、選挙中にフェイスブックにこう書き込んだと週刊文春が報じている。

<「ワタミの桑原豊社長が応援に来てくれました。『週刊文春なめんなよ!!』ダメだって桑原さん、Facebookでそんなこと言っちゃ…(笑)」>

   ところが、この文章は30分も経たずに削除されたそうだ。週刊文春対渡辺のバトル第2ラウンドは永田町に移ったが、先が楽しみである。

国会対決が楽しみ!ブラック企業追及の共産党・吉良よし子VSワタミ渡辺美樹

   東京選挙区で第3位で堂々当選したのは共産党の吉良よし子さん。12年ぶりに共産党は議席を取り戻した。彼女は選挙中、ワタミをはじめとするブラック企業追及を舌鋒鋭くしたと週刊文春が書いている。

   彼女は共産党とも思えない美形で、支持者たちからアイドル的な存在として人気があり、支持者たちは彼女の写真集まで製作したそうだ。『KIRAry☆Diary』と題された写真集は、発売10日間で1000部が完売した。彼女はブラック企業についてこう語る。

<「労働者を生きていけないような状態に追いやっている。人を燃料のように使い捨てるやり方は、同じ人間として許しがたいんです」>

   週刊文春のいうように、国会でワタミの渡辺美樹との対決が楽しみである。

   今回の選挙で一番注目を集めたのは、やはり東京選挙区から出馬した反原発の星・山本太郎氏であろう。見事4位当選を果たしたが、週刊新潮は山本の横にいるべき夫人の姿が見えないと訝っている。彼女は選挙中も山本の母親とフィリピンに滞在していたそうだ。週刊新潮がその理由を聞くと、こう答えている。

<「僕ひとりでも殺害予告されているんです。だって(妻が姿を現せば)マトが2つになっちゃうじゃないですか。僕が直接狙われなくても、あちらが狙われると……その手には乗りません!」>

   大変な覚悟で挑んだ選挙だったようである。

   みんなの党の渡辺喜美代表は相変わらず、妻のまゆみさんの尻に敷かれているようだ。東京都議選で議席を増やしたため、まゆみさんが「もっと候補者を擁立すべき」だといい出し、バタバタで候補者を擁立したため多くが惨敗してしまった。党ナンバー2の江田憲司幹事長が「候補は役員会で決めるべきだ」と主張しても、渡辺代表は聞きもせず、江田が党を出るという話まで出ているというのである。野党再編の口火を切るのはみんなの党かと噂されているそうだが、いっそのこと奥さんを代表にしたらいいのではないか。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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