山口県周南市の山間の集落で5人が殺害された連続殺人事件は、発生から2日たっても事件に関わりがあると見られる63歳の男はいまだに見つかっていない。男は「村八分」にされていると感じたのか、2年前に警察へ出向いて「集落で仲間はずれにされている」と相談していたことがわかった。警察は250人体制で重要参考人として男の行方を捜索しているが、いったいどこに消えたのか。
大勢の警察官・消防団員いる中での殺人
男の自宅駐車場には車2台が残されたままで、最寄りのバス停までは20分以上もある。バスやタクシーに乗った形跡もない。徒歩で山の中に入って行ったとしか考えられない。3人が殺害され放火された翌日未明、さらに2人の殺害されたが、大勢の警察官や消防団員がいるなかでスキをみて犯行に及んでいる。男が犯人ならば、未明に車で逃走すれば不審に思われると思ったのだろう。
男は神奈川県川崎市に住んでいたが、15年前に両親の介護のために実家に戻ってきた。定職に就くことなく、屋根の修理や障子の張り替えなどの仕事を請け負っていたという。しかし、集落の生活に馴染めなかったのか、両親が亡くなった後、住民とのトラブルが目立つようになった。
近所の住民は「(殺された)貞森誠さんの胸倉をつかんでケンカしていた」「挨拶はしませんからね。われわれは頭を下げますけどね」と男の偏屈ぶりを話す。3年前には、殺された河村聡子(73)との間にこんなトラブルがあった。河村夫婦が田んぼに農薬をまいていると、男が突然「殺す気か!」と怒鳴り込んできたという。その後、河村宅でボヤ騒ぎが発生して、このときは住民が消しとめたが、数日後に男の家の窓ガラス越しに、例の「つけびして煙り喜ぶ田舎者 かつを」の張り紙があったという。
怒り増幅させ周到に準備
司会のみのもんた「犯人と思われる人間は集落の人全員に恨みを持っていたといいますが、何かそういう雰囲気があるんですか」
現場を取材中の奥平邦彦取材キャスターは、「男は2年前に『仲間はずれにされ、集落から孤立している』という悩みを警察に相談していました。このときは『気持ちがスッキリした』といって帰り、相談は1回だけだったようです」と伝える。
犯罪心理学が専門の越智啓太法政大学教授は「こういうパターンの事件は、ほとんど場合、怒りを増幅させて『やってやる』と思い込んでから、計画して準備をして最適なタイミングでやっている」と話す。「村八分」というと語弊があるが、男にとってはそれに近い恨みつらみが住民に対してあったのかもしれない。