8世帯14人の集落で5人の遺体が発見されるという異常な事件が山口県周南市の金峰地区で発生した。山口県警は被害が拡大することを防ぐため、住民たちを集会所に避難させるとともに、姿を消した近所に住む63歳の男の行方を追っている。高齢者が多く、人の出入りの少ない山あいの集落でいったい何が起きたのか。
8世帯14人の集落で5人撲殺
発端はおとといの21日(2013年7月)夜だ。貞森誠さん(71)方と近所の山本ミヤ子さん(79)方が全焼し、焼け跡から貞森さんと妻喜代子さん(72)、それに山本さんと見られる3人の遺体が見つかった。3人とも鈍器のようなもので殴られた痕があり、県警は殺されたあと放火されたとみている。
さらに、きのう22日(2013年7月)の昼には、火災現場から数百メートルのところに住む河村聡子さん(73)と石村文人さん(80)がそれぞれ自宅で遺体となって見つかった。2人とも頭を鈍器のようなもので殴られ、頭の骨が折れていた。県警は5人殺害の連続殺人・放火事件とみて捜査している。
互いをよく知る住民たちが、家族のように一緒にグランウンドゴルフをするなど助け合いながら暮らしてきた集落だ。殺人事件など思いもしない出来事だったに違いない。その中で、行方がわからなくなっている男は異質だったという。
レポーターの阿部祐二の取材によると、10数年前に実家のある集落に戻ってきて1人暮らしをしていたが、近所付き合いはなく、自治会には入らず、草刈りや掃除にも出てこない。なぜか自宅には防犯カメラを取り付けていた。さらに、「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」と書いた張り紙があった。これは何を意味するのか。幼馴染によると、近くでボヤがあった12、3年前から張ってあるそうだ。
自宅には大量の犬のえさ。クルマ置きっぱなし
姿を消した男は犬を2匹飼っていて、留守宅には大量のエサが置かれていた。車も置きっぱなしのままだ。こうしたことから阿部が推測する。「トラブルについて聞きますと、犬をめぐるトラブルに行き着きます。この男が関わっているとすれば、無差別ではなく、勝手な思い込みで、犬と何らかのかかわりのある人を狙ったのではないでしょうか」
コメンテーターの香山リカ(精神科医)は「まだわからないところが多いが、都会に出て行って、多分、うまくいかなくて戻ってきて、不本意な気持ちを持ちながら、地元で暮らさざるを得なかったのではないですかね。とすれば、周囲に溶け込もうとしないし、周囲のちょっとしたことが怒りや恨みにつながり、それがどんどん膨らんでいって、爆発したとも考えられます」と分析する。
ロバート・キャンベル(東大教授)「張り紙は非常に挑発的です。季語はないが、俳句の形になっている。周りの人とは違うという過剰な自意識を持った人物のようにみえますね」
今どこにいると考えられるのか。キャスターのテリー伊藤は「山中で自殺した可能性もあるし、あまりにも異常な事件なので、場合によっては、もう1度戻ってくる可能性もなきにしもあらず」という。