ブラジル、インド、インドネシアから逃げ出すマネー
一方、ブラジル、インド、インドネシアなどを苦しめているのはマネーの逆流だ。アメリカの中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)はリーマンショックを受けて大量の資金を市場に供給し、これが新興国にも流れて成長を後押ししていた。ところが、バーナンキ議長がこの5月、量的緩和を年内にも縮小する可能性を示唆したとたんにマネーの逆流が始まった。新興国の通貨は売られ、通貨安は輸入品の値上がりをまねいて、インフレが同時に襲ったのである。
先週、サンパウロであったデモは「医療や教育に金を使え」「物価が上がって食料品が買えない」と切実な叫びにあふれた。週末の青空市場には、 生活費に充てるために手放す車がずらりと並ぶ。緩和マネーが集まり、オリンピック開催も決まって好景気に湧いたのがウソのようだ。
インドではルピーがこの2か月で対ドルで10%下落した。ただちに原油の輸入に響いてガソリンが高騰。先月は車の売れ行きが5%落ちた。インドネシアルピアは2か月で2%下落して輸入食材を直撃した。レストランの値上げは個人消費に響く。新興国経済はかくも脆弱だったのか。
第一生命経済研究所エコノミスト西濱徹氏は「3か国に共通しているのは経常赤字と財政悪化です。何かあったとき資金が逃げやすい」という。また、財政支出では補助金がインドで2割弱、インドネシアで15%もあり、この是正がはじまったところへ、間が悪くインフレがぶつかってしまったという。
処方箋はない。構造改革と基礎的な力をつけないといけないというが、それが簡単にできないから新興国なのではないか。それよりも、円が安くなったと喜んでいる日本とはいったい何なのだ。国債のほとんどを日本人が買っているという強みを、あらためて噛み締める。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2013年7月18日放送「新興国経済に異変~マネーの逆流で何が~」)