駆除しても放射線汚染で食用にならないイノシシ肉
イノシシの生息圏も変わった。かつては、内陸の山林に散在していたものが、いまや放置された農地から海岸にまで広がっている。雑食だが、50%は草なので生息には好条件なのである。生息域が拡大すると繁殖率も高くなる。
むろん駆除もしているのだが、福島のイノシシは食べられない。肉から最高で6万1000ベクレル/キロ(基準値の610倍)もの放射性セシウムが検出されるからだ。山間部は除染していないので汚染も高い。
県の調査は動物の生息域の広がりと数の把握から始まる。多くの個体にGPSをつけて行動を確認し、超小型の線量計も使ってホットスポッ トの割り出しも考えているという。専門家は「野生の変化のスピードにどこまでついていけるかだ」という。元に戻すなんて到底無理だ。
どんな対策が可能か。まだだれも答えをもっていない。人が生態系の頂点にいるというのは、すべての動物の運命にも責任を負うということだろう。満足にコントロールもできない危険なオモチャを振り回した結果がこれだ。それでもなお、懲りない面々がいる。
ヤンヤン
*NHKクローズアップ現代(2013年7月11日放送「激増する野生動物~福島の生態系に何が~」)