昨年(2012年)に日本で一番売れたという高血圧治療薬の臨床研究論文が、薬の売れ行きに有利になるよう操作されていた疑いが浮上した。問題になっているのは、京都府立医科大の松原弘明元教授が製薬会社「ノバルティスファーマ」(本社・東京)の高血圧治療薬ディオバンの効果を調べた臨床研究の論文で、2009年に発表された。
脳卒中などの予防効果を高く見せかけ
論文のデータに疑義があるという指摘が外部からあり、府立医科大の調査委員会が調査し、11日に「データに操作があった」と発表した。新聞報道によると、ほかの薬に比べて脳卒中などを予防する効果を実際より高く見せかけていた疑いがあるという。
製薬会社の元社員が薬の効果を裏付けるデータの解析に関与していたことも判明しており、調査委がこの元社員を事情聴取しようと協力を求めたところ、すでに退社したとして断られたという。
客観的であるべき薬の効能を調べる論文を操作していたことについて、コメンテーターの与良正男(毎日新聞論説委員)は次のように指摘した。
「大学側は恣意的にデータを操作したのではないといっているが、操作とか改ざんとかは恣意的以外の何ものでもありませんよ。大学だけでは調査に限界があるように思いますね。文科省なのか厚労省なのか、両省とも対策を協議するというが、命に関わる大問題で、構造的な問題をはらんでいる可能性もあります」
刑事事件として捜査当局も乗り出さなければいけない大問題に発展する可能性がありそうだ。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト