親孝行を法律で義務づけ「頻繁に帰省して面倒見ろ」老親虐待に頭悩ます中国政府

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   中国で今月(2013年7月)から施行された法律が物議をかもしている。「改正高齢者権益保障法」で、そこにはこんなことまで書かれている。「常回家看看」、どういう意味か。「頻繁に帰省して親の面倒をみなさい」というのだ。市民は賛否両論。「親孝行を法律で強制するなんて、どんな社会だよ」「法律で強制したところで感情は伴わないよ」「この法律は非難すべきじゃない。両親の判断でしょ」

   しかし、施行してすぐある裁判でこれが適用された。原告は77歳の1人暮らしの女性で、離れて住む娘夫婦に「家賃(月約1万円)、医療費(約 13万円)、定期的に家に来ること」などを求めた。判決は「2か月に1回は実家に戻るべし」と、訴えを全面的に認めた。

一人っ子政策のツケ「留守老人」「失独老人」「空巣老人」急増

   こんな法律はいわば中国の政策の矛盾の表れだ。急激な高齢化は1970年代後半から実施された「1人っ子政策」のツケともいえる。60歳以上の人口は2000年には約1億3000万人だったが、2012年末には約1億9400万人と人口の14.3%を占めるまでになった。 15年後の2028年には30%以上になるという。こうした偏りの結果、農村部では若い夫婦が出稼ぎに出て、残された孫と暮らす「留守老人」が急増した。「留守老人」のほか、子どもを亡くした「失独老人」、家族と離れた「空巣老人」が増えているという。60歳以上の割合はすでに17%だ。

   子どもによる親への虐待、高齢者の孤独死も社会問題となっている。1人暮らしの高齢者が集団で暮らす「老老介護」も各地で増えている。河北省の施設で68歳の男性は「今は私が高齢者を介護できる。私が年老いたら新しい若い人が介護してくれることを願ってます」という。中国事情に詳しいジャー ナリストの富坂聰氏は、「親を虐待したり放ったらかしにしたりが大きな現象になって、悩んだ政府が法律で規制となった」という。

   その内容は、これが法律かいなと首をひねりたくなる条項がズラリ並んでいる。「家族は高齢者の精神状態に配慮して、高齢者を冷遇してはならない」「別居している場合には頻繁に訪問する」「雇用主は訪問のための休暇を保証しなければならない」などなどだ。ただし、罰則はない。

文   ヤンヤン| 似顔絵 池田マコト
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