ゆるい厚労省の規制法―制限は人員や設備だけ
それにしても不思議なのは、日本が世界でも突出した再生医療野放し大国になっていることだろう。これについては世界的な批判が高まっていて、厚生労働省は規制に乗り出した。しかし、現に治療を受けている患者、受けたい患者もいる。ALSという難病で話すこともできない患者は、「安全性や有効性がわからなくても、リスクを含めての十分な説明を受けられ、そして可能性が少しでもあるならば治療を受けたい」とパソコンで綴った。
厚労省は再生医療を受けたい人の気持ちを無下にはできず、どの程度の規制をかければいいのか困った挙げ句、とりえず治療施設の「人員」「設備」に条件をつけるという緩い規制法案をつくることにしたという。そのウラには、再生医療ビジネスや医療ツーリズムを盛り立てて、成長政策につなげたい狙いも透けて見えてきそうではある。
大和理事は「体性幹細胞治療は一歩一歩慎重に進めていかなければならない。もし『事故』が起きれば、再生医療全体が大きなダメージを受け、停滞してしまう」といったことを繰り返していたが、番組を見る限り、「事故」は世の中に広く知られてないだけで、すでに起きているように思えなくもない。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2013年6月25日放送「追跡 再生医療トラブル ~体性幹細胞治療の闇~」)