ヨットで太平洋横断を目指していたフリーキャスターの辛坊治郎さん(57)と盲目のクルー岩本光弘さん(46)が、三陸海岸から1200キロの太平洋上で浸水のため船体を放棄、救命ボートで10時間漂流したのち海上自衛隊の飛行艇に救助された。
辛坊らは今月8日(2013年6月)、大阪を出航して小名浜に寄港したあと、16日にアメリカ・ダンディエゴへ向かって出航した。19日の低気圧を乗り切って一息ついた 21日早朝、船体を下から突き上げるような音が続いて右舷から浸水が始まったという。
大荒れの海で海自と海保が決死の救難活動
「数分間で数十センチ」という浸水で、排水作業も追いつかず、救難信号を出して午前8時1分にライフラフト(救命艇)に乗り移った。7時間後に上空にエンジン音が聞こえ、海上自衛隊の救難飛行艇US-2を確認したが、波高が3メートル以上あって着水できなかった。日没直前にようやく着水できるようになりボートで救出された。これを別の海自機が撮った映像があった。薄暗い海面に浮かぶ機影は小さく頼りなく見えたが、日本の飛行艇の技術は世界一を誇る。
厚木基地に着いた辛坊らはおととい22日未明に記者会見して、「2人の命のために、11人の海上自衛隊のみなさんが命がけで救助してくださった。ああ、素晴らしい国に生まれたなと思います。モーターボートのエンジン音が聞こえたとき、本当にうれしかった」と涙を流した。
当時の海上は飛行艇が訓練でも降りたことがないような状況だったといい、辛坊は「申しわけありませんというしかない」「ご迷惑をおかけしました」と頭を下げた。
司会の小倉智昭「辛坊さん、助かってよかったですよ。40年乗っていても海はこわい」
ぶつかったのは東日本大震災の漂流コンテナか
クルーの岩本さんは「何か固いものにぶつかったような音だった」という。専門家はコンテナかなにかにぶつかったのかもという。
小倉は「東日本大震災の後、漂流物が多いといいますからね。辛坊さんが救助してくれた人に『お名前は』と聞いたら、『名前はいいません』なんだって。『どこの部隊ですか』と聞くと、制服のワッペンを外してくれたのだと話してます。ドラマのワンシー ンみたいですね」
その辛坊は会見で「救助に税金を使うことになり、反省しなければいけない」と辛そうだった。元海上自衛隊の専門家は、航空機の燃料だけで800万円、海上保安庁の航空機や船、人件費を入れれば、少なくとも1000万円という。
小倉「辛坊さんご自身が口火をきったので、われわれもアンケートしてみました」
街で20代以上の男女100人に聞いてみた。結果は税金を使うことに賛成 61人、反対39人だった。意見が分かれたのは「個人的な冒険じゃないか」「いや、岩本さんは視覚障害があり勇気をかうべきだ」と言う点だった。海でも山でも遭難救助を公的機関が行うときは費用負担はないが、民間がかかわれば料金がかかる。保険も必要となる。
小倉は「海自も海保も、事故があれば日本人でも外国人でも出動するもの。一番傷ついているのは辛坊さんと岩本さんですよ。冒険とはそう簡単には達成できないということですね」