姜尚中「心」30万部ヒットで話題にされる「長男の自死」「在日の葛藤」
姜尚中氏の小説『心』(集英社)が売れている。4年前に亡くなった長男の死を見つめたものだとして話題になり、30万部を超えたという。いまや在日の大スターになった姜氏だが、この本を読んだ在日知識人のサークルからはいろいろな批判が出ていると、週刊文春が書いている。曰く「息子さんのことはほとんど描かれていない」「自分に都合の良い事しか書いてなかった」「息子が死んだ年を間違えているのはなぜ」などなど。
姜氏の奥さんは、付き合った当初、韓国人だと勘違いしていたようだが、日本人だと知り、かなり悩んだという話まで出ている。お母さんが許さないので入籍できなかった。ようやく息子が生まれてから、お母さんに許してもらえたそうである。昔から姜氏を知るA氏がこう語っている。
<「在日コリアンの多くは子供の教育に悩みます。私も多くの在日の悲劇を見てきました。特に子供の自殺の前は、未遂や家庭内暴力が繰り返されます。親は、自分を責めて苦しみます。それに向き合うことは大変なエネルギーが必要であり、姜さんの悲しみがどれほど深かったことかと、私も本当に心が痛みます」>
だが、スマートで頭がいい姜氏は、女性にも優しかったと在日女性がこんな体験を話している。<「一度、カラオケ屋で隣に座った時、『僕は、なぜ君と早く出会わなかったんだろう』って口説かれたことがあります。お酒も飲まず、歌も歌わずに。もちろん、当時、姜尚中さんも私も既婚者でしたから、びっくりしました。韓国社会では姦通は重罪なのに」>
有名人はつらい。長男を失っているのにもかかわらず、ここまで書かれるとは姜氏が気の毒になる。
姜氏は週刊文春との電話インタビューでこんなことを聞かれている。
<――ご長男の遺言と二万人近くの被災者の遺言を同じものと解釈するのは、無理があるのではないかという指摘もあります。
「息子の魂の看取りという点では同じなんです、分かりますか?『心』を読んで、子供の死の悲しみを汲み取る人もいます、あるいは、震災で亡くなられた方の死を読み取る人もいます。あるいは私の長男のように、薬で苦しみながら、病気と自死と、本当に近い形で亡くなられた方もいる。この小説を読んで、個別的な死を普遍的な死にまで高めようとするからこそ、初めて人は悲しみから癒されるんです」>
夏目漱石の『こころ』を念頭に置いての書名であろうか。漱石のは主人公が慕う先生の自死の話である。姜氏はそのうち息子の死について書くといっているが、どんなものになるのだろう。それまでは静かに見ていたいと、私は思う。