死人からも税金搾り取る「死亡消費税」安倍首相ブレーンが提案する「墓泥棒」

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   あれほどアベノミクスを礼賛した『週刊現代』は、暴落以降、批判派に「大転向」して、今週はついに「株価1万円割れ、安倍退陣」という記事までやりだした。自民党閣僚経験者のこんな話を載せている。

<「『これ以上、株価が下がり続けたら危険水域だ』と悲鳴が上がり始めた。もしも参院選で圧勝することに失敗し、『ねじれ』を解消できなければ、長期安定政権という首相の野望は潰えます。
   日本株は投げ売りが加速し、本当に1万円を割り込み元の水準に戻ってしまう。安倍首相は選挙と失政の責任を取り、退陣せざるをえなくなるでしょう」>

   もしこのような事態になったら、週刊現代はどのような責任をとるのか。そちらのほうも気になる。

   アベノミクス批判だったら『週刊ポスト』のほうが断然鋭い。安倍政権が高い支持率の陰で進めていたのは、国民の財産を掠め取り、雇用を失わせ、権力の維持のために老後の年金まで奪う「国民背信の政治」だったと書いている。

   なかでも、6月3日に社会保障制度改革国民会議で、安倍首相のブレーンとして知られる民間委員の伊藤元重・東大教授から「経済財政の視点からの社会保障改革」という資料が提示されたそうだが、その内容たるや、とんでもない代物である。増大する社会保障費の財源として、「高齢者医療費をカバーする目的での死亡消費税の導入」の提案だというのだ。立正大学法学部客員教授の浦野広明氏がこう語る。

<「国は今後急速に増えていく社会保障費を賄いきれない。現役世代の負担にも限界がある。そこで消費税のように国民全員に死ぬときに財産から一定の税率を『社会保障精算税』として納めさせる。相続人ではなく、死者から取るから死亡消費税なのでしょう」>

   マイナンバー制度を導入したのも、そのためだそうである。実際に導入されると、こんなことが起きるという。<長年、介護してきた父が亡くなった。息子は介護のために会社を早期退職し、妻のパートで食べている。貯金も底を尽いた。遺産として同居していた家が残ったものの、評価額は3000万円。そこに「死亡消費税」の請求書が届く。消費税並みの5%なら150万円、消費税引き上げ後の税率10%なら300万円になる。とても払えず、家を手放すことになった」

   現在、個人の金融資産は1545兆円。そのうち1000兆円近くを高度成長期を支えた団塊の世代をはじめとする65歳以上の約3000万人が保有しているといわれる。そこに死亡消費税をかけるとどうなるか。65歳以上の世代が平均寿命を迎える今後15年間で、税率5%なら50兆円、消費税引き上げ後の10%だと100兆円の課税になるという。国民の財産を減らされ、国には途方もない金額が入ってくるというのである。

   週刊ポストは「棺桶を掘り返す『墓泥棒』」と難じているが、その通りである。親を介護しても財産を手にできないとなれば、介護から逃げてしまう「親不孝」なガキどもが増えること間違いない。

アホノミクスが見えてきた!首切り合法化と年金積立金で株価維持

   アベノミクスをアホノミクスと命名した同志社大学大学院ビジネス研究科・浜矩子教授は、安倍首相がいっている「10年間で年収を150万円増やす」に対して、その見えすいた騙し方が「アホ」だと、こういう。<「国民総所得は『国民の給与所得』とは全く別の指標で、企業の利益や政府の公共投資が含まれる。たとえば企業が社員のクビを切って海外に工場を移転し、そこで利益をあげれば国民総所得は増えるし、政府が増税で公共事業をバラ撒いても増える。安倍内閣がこの指標を持ち出し『給料が上がる』と説明していますが、それは間違いなのです」>

   池田勇人元首相がいった「給料を2倍にする」とは全く違うのである。

   さらに週刊ポストは、安倍首相が進めようとしているのは、サラリーマンの「首切り合法化」だという。<これは、派遣や有期の契約社員など「非正規労働者」と「正社員」の中間形態として、勤務地域や職種を限定して採用する「限定正社員」(ジョブ型正社員)をつくるというものだ。

   原則、正社員と同じ無期契約だが、正社員が「企業全体の業績の著しい悪化」などの4要件を満たさなければ解雇できないのに対して、限定正社員は企業の業績が良くても、その地域から工場や店舗を撤退したり、その職種が必要なくなった場合、企業の判断で解雇できるようにする>

   労働問題に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏がこう指摘している。<「雇用規制の緩和は財界の悲願です。現行制度で企業が個々の社員と解雇ルールを定めた契約を結ぶことができるといっても、裁判などで覆える可能性が高い。だから国に限定正社員を制度化させ、『首にしてもいい』というお墨付きが欲しいわけです」

   安倍内閣は株価が大暴落を続けていた6月7日、厚労省傘下の「年金積立金管理運用独立行政法人」が突然、株の買い増しを決めたという。この組織はサラリーマンの厚生年金と自営業者の国民年金の積立金約120兆円を運用する「世界最大の年金ファンド」で、運用先は国債など国内債券が67% 、国内株式11% 、外国株式9%などと定められている。

   ところが、政府はその資産運用配分を見直し、国内債券の割合を60%に引き下げ、かわりに国内株式を12%に引き上げた。わずか1%でも1兆円を超える。社会保険労務士の北村庄吾氏は厳しくこう指摘している。

<「国民から預かっている公的年金の運用は手堅くすべきで、専門家の間にはリスクある株式での運用そのものに批判が強い。百歩譲って株を買うにしても、せめて株価上昇を始めた今年1~2月までに決めるべきでした。それなのにわざわざ株価急落の真っ最中に買い増しを決めたのは、国民の財産を政権維持のために使っているも同然です。株価がさらに暴落したら、国民の年金資金を失うことになる。その責任を一体、誰が取るのか」>

   アベノミクスのメッキが剥がれてきたようである。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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