「ITが働き方を変える」といったことは、ファクスやISDNの時代から何十年と言われ続けている。たしかにコンピュータやスマホ、ネットは、紙と鉛筆、電話帳などに取って代わったが、それで人間の働き方はどれくらい変わっただろうか。在宅勤務、テレワーク、SOHO、ノマドなどなど、トレンディーなコンセプトが次々に浮かんでは消えていくようだ。
結局、技術的に可能だということと、それを社会が受け入れるかどうかはまた別の問題であり、人間の心理、文化、慣習のほうが技術の進歩よりも強かったりする。たとえば、サラリーマンの在宅勤務は技術的に可能でもあまり広がらない。そのウラには、会社の仕事というものは、お互い顔を見て仕事しなければうまくいかないという考え方があったりする。それに第一、上司が直に監視できない環境では、社員にサボられる不安が大きいんである。
アプリ・ウェブデザイン開発受注のクリエーター、ネットで仕事を見つけるデザイナー
ただ、今「クラウドソーシング」が企業も働き方も激変させているという。クラウドソーシングとは、ネットでアウトソーシングといったほどの意味で、クラウドは「雲」ではなく「群衆」だそうである。主としてあのIT先進国の米国で進んでいる激変なのだが、日本でもクラウドソーシング市場が立ち上がりつつあり、チャンスをつかむ日本の若者も増えているという。ネットでアプリやウェブデザインの開発を受注するクリエーター集団、ネットで仕事を見つけるデザイナーなどで、そんなのはビットバレーの昔からいたはずであるが、増えているのか。いったい昔とナニが違うのか。
ゲストの比嘉邦彦・東京工業大学教授によれば、クラウドソーシングは透明性が非常に高く、募集の詳細やら銭金のことやらが公開されており、実績・評価なども公開されているのが特徴なんだそうな。職種も多いので、あのテレワークの世界が今やクラウドソーシングで実現しているんだとか。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2013年6月18日放送「企業も働き方も激変~クラウドソーシングの衝撃~」)