今度は「原発事故で死者はいない」ときた。自民党の高市早苗・政調会長がおととい17日(2013年6月)、神戸市内の講演会で口にした。放射能による死者はゼロでも、関連死は福島だけで1300人を超える。これをわかっていないといわれても仕方がない。
講演は自民党兵庫県連の会合で、原発再稼働への意欲を示した中での発言だったが、「悲惨な爆発事故を起こした福島原発も含め、死亡者が出ている状況にもない」とやってしまった。
小泉進次郎「戻れない、仮設を強いられている方々の気持ちをわかってない」
当然ながら、批判はきつい。民主党からは「政権を担う資格がない。与党の政調会長失格。福島のみなさんへの裏切りだ」(細野豪志・幹事長)。みんなの党の江田憲司・幹事長も「即刻、政調会長、政治家を辞任すべきだ」。自民党からも「戻れない方、仮設を強いられている方、そうした方々の気持ちをわかってないと思われかねない」(小泉進次郎・青年局長)と言う声が上がる一方で、「避難者が大勢いるような状況で、死亡者がいないのだからという理屈は成り立たない。政調会長はそういう趣旨ではない」(石破茂・幹事長)とかばう発言もあった。
高市は「被ばくで亡くなった人はいないが、安全基準は最高レベルで保たなければとお伝えしたかった。もしかしたら、しゃべり方が下手だった かも」と弁解に大わらわだ。
事故直後、野菜の採取制限が出た日に農業の男性、酪農の男性も絶望して自殺している。病院から長距離の避難行の中で亡くなったのは何十人という数だ。避難生活の中での死もある。「聞いていて腹立たしい限りです」と避難者の怒りはおさまらない。
司会の小倉智昭「橋下さんもそうだったが、最初の発言が肝心で、あとでいくら肉付けしても追いつかない」。田崎史郎(時事通信解説委員)も「エッ、と思いました。発言自体がよくない」という。
復興庁がまとめた東日本大震災の関連死は、この3月末(2013年)現在で2688人、うち福島県が1383人だ。福島が半数以上なのは、原発事故に伴う避難などの影響が大きいと見られると復興庁が認めている。