地球温暖化の原因として嫌われ者の二酸化炭素を使って、燃料やプラスチックなどを作り出す夢の技術「人工光合成」の研究が日本、欧米で広がっている。国谷裕子キャスターは「私たち人類のすべての活動は二酸化炭素を排出します。化石燃料を燃やしても、息をしても、二酸化炭素を出すわけです。地球上で、これと逆の動き、つまり二酸化炭素から炭水化物を合成できるのは、光合成を行う植物だけです。この光合成を人工的に行い、燃料やプラスチックを作りだそうという壮大な研究が進んでいます」と説明する。
アメリカも本腰「今後3年間で植物の10倍以上の効率」
ある自動車メーカーの担当者は「研究はあと一歩という段階まで進んでいます。しかし、実用化できるまではまだ時間がかかる」と話す。人工光合成の研究で日本は世界のトップを行く。国、大学、企業が密接に連携して研究開発を行っているが、アメリカも100億円をかけた「人工光合成ジョイントセンター(JCAP)」に大学や研究施設などからさまざまな分野の専門家が集められ、実用化を目指している。センターのリーダーは「今後3年間で、植物の10倍以上の効率にすることを目指している」と語る。
30年以上研究してきた日本。課題は次世代研究者の育成
首都大学東京の特任教授で人工光合成研究センター長の井上春夫氏に、国谷は「欧米の追い上げに日本は勝てるでしょうか」と聞く。「日本には光合成の研究で30年の歴史があります。外国の力を借りず、日本人だけで研究してきました。これまで日本は世界をリードしてきたわけで、そう簡単には追いつかれません。
課題は、人工光合成の研究とその成果を次の世代、あるいはさらにその次の世代にどう伝えるか。バトンタッチをどうするかにかかっていると思います」
自動車メーカー研究員の「あと一歩」とはどういう段階のことなのか、そこが知りたかったのだが。
ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2013年6月17日放送「二酸化炭素が資源に!夢の人工光合成」)