「俺は刑務所に来たんじゃないぞ。中央病院の責任者!」というタイトルのブログの書き込みが、岩手県議会議員のものだったからたちまち炎上してしまった。刑務所と病院と県会議員というおそまつな三題噺だ。
ブログの主は小泉光男氏(56)。背広にネクタイ、メガネの男性が笑っている。よくある政治家のページだ。岩手・一戸町の出身で、おととし(2011年)9月に初当選した。キャッチフレーズは「岩手県北に新しい風を吹き込む熱血男」。熱くなった理由はこんなことだった。
「名前で呼べよ。15000円も払う上得意だぞ。有り難うございます言え」
5日(2013年6月)の先週水曜日、小泉議員は岩手県立中央病院を受診し、診療を終わって「241番、241番の方」と会計の呼び出しがあった。さらに「小泉さん、清算ができあがりました。どうぞお越し下さい」と呼ばれたことに立腹して、医療費を支払わずにそのまま立ち去った。
それをブログに書き込み、「ここは刑務所か。名前で呼べよ。なんだ241番とは」とかみついた。「『お越し下さい?』。こちらは15000円以上の検査料を支払う上得意のお客さんだぞ。そっち側から『本日は有難うございました』とカウンターの外へ出て、長椅子に座っている患者の方にくるべきだろうが」「デパートでもどこでも、1万円以上のお買い物客に精算書をとりに来いと顎でしゃくって呼び寄せますか」と相当に怒っている。
病院に電話でもクレームを付け、これらもブログに書いたうえ、「私が間違っていますか。岩手県立中央病院の対応がまち がっているとおもいますか!」と呼びかけた。
地元一戸町で聞くと、人当たりはいい、真面目、ひらめきが早い、優しい、腰の低い人などなど。要するにいい人らしいのだが、病院とブログの1件を聞くと、みな一様に「バカじゃないの。話にならない。何考えてんだ」「議員だから、特権だからと、心の狭さがあるんじゃないか」とボロクソだ。
自宅窓にダンボール張り付け、電話解約、ブログ閉鎖
当然、ブログにもはね返って大炎上。9日にはブログは閉鎖されてしまった。岸本哲也レポーターが小泉議員に電話をかけたが、「現在使われておりません」だった。盛岡市内の自宅を訪ね「東京から来たんですが」と声をかけると、「ちょっとすみません」と屋内に入ってそれっきり。荷物の積み卸しでもしていたのか、外に止まっている車のトランクは開けっ放しのまま、待てど暮らせど返事なし。ついには窓ガラスに内側から段ボールが貼付けられてしまった。
司会の小倉智昭「ブログで謝罪したんだって?」
岸本「東京のメディアがいたんでびっくりしたみたいで、夜8時まで待ったんですが(笑い)、話は聞けませんでした」
ブログでは7日に「不適切な表現があった」として「削除のうえお詫び」していた。来週月曜に県議会の委員会でこの問題がとりあげられる。いちばん厳しいと「辞職勧告」になるという。
小倉「番号の方がいいという人もあるかも」
医師の宋美玄は「プライバシーですから、大きい病院では増えてますね。小泉議員の話は医者の間で一瞬で広まって、モンスターにされた。地方の議員ではこうした勘違いは多い」(笑い)
このところ議員ブログの炎上がよくある。参院選からはネット選挙も解禁になる。
竹田圭吾(ニューズウィーク日本版編集主幹)「いいことですよ。きれいごとばかりいう政治家の本心がわかるから」
でも、意図的に使ったら、これ以上危ないオモチャもないと思うんだが…。