政府機関や企業へのサイバー攻撃は、警察庁にわかっているだけでも年間1000件以上にのぼる。狙われるのは政府の機密や先端技術情報だ。盗むといってもコピーだから、何が盗まれたかの確認は難しく、盗まれたかどうかさえ気付かなかったりする。まして防御となると日本はほとんど無防備に近い状況だという。
北京のハッカーグループ「組織的に情報盗んで販売。日本政府機関のも盗んだ」
高松にある国土交通省四国地方整備局がおととし(2011年)攻撃を受けた。道路保全担当の業務用アドレスに不審なメールが入った。「○○さん」と名指しで 、「香川県の奥寺です」。覚えはなかったが返信したところ、写真が送られてきた。その写真がウイルスだった。表面上は何も起らなかったが、パソコンにあった国交省関係900人近くのメールアドレスが盗まれたとみられる。さらに、局内のサーバーから他の職員の情報まで引き出そうとしていた。当の職員は「なぜターゲットになったかわからない。怖い」という。
農林水産省は先月(2013年5月)、TPP交渉の機密文書が狙われ、5台のパソコンから計124点の行政文書が流出した可能性があると発表した。宇宙や防衛分野でも、ロケットなどの情報が盗まれたとみられるが、全容は把握できていない。
攻撃を行っているのはだれか。セキュリティ会社の福森大喜さんは、ウイルス114を解析した結果、6割から中国語で作成された痕跡を見つけた。なかにひとつ、作成者欄に実在する企業名があった。山東省に本社があるIT会社だった。NHKは本社を訪ねたが、担当者は「ウイルスは作っていない。わけがわからない」の一点張りだった。
実際に攻撃をしているという北京のハッカーグループは「組織的に情報を盗んで販売している。日本の政府機関のものも盗んだ」と明かした。依頼してくるのはだれなのか。「身元を明かさない組織、政治団体、企業だ。ネットにつながっていればどんな情報でも盗める」とうそぶいたが、中国政府や軍との関わりは否定した。