アフリカ大陸がいま「最後のフロンティア」として熱い視線を集めている。中国はじめ各国のビジネス参入も盛んだが、注目は農業開発だ。日本はやや出遅れ。6月1日(2013年)から横浜で始まるアフリカ開発会議では、軸足をこれまでの「援助」から「ビジネス」へと移すというのだが…。
日本、中国、インドがしのぎ削るモザンビーク穀倉地帯
先月、モザンビークの農業大臣が来日した。テーマは大豆だ。豆乳製品を口にした大臣に「モザンビークの大豆で作りましょう」。日本は4年前から北部穀倉地帯の開発に官民あげて取り組んでいる。モザンビーク産の大豆を輸入するため、港湾・道路建設まで手がける。
日本はJICAと商社、大豆加工メーカーが「チームジャパン」を組む。JICAの農業専門家が農家を指導し、試験栽培では「北米産に劣らない」ものを得たという。秋までに日本に適した品種を絞り込む予定だ。収穫物は商社がきちんと買い取る。地元の説得も商社がやる。課題はまとまった量を長期にわたって生産してもらうことだ。
モザンビークには中国、インドなども参入している。中国は昨年、農業支援センターを開いて野菜の栽培を指導して農家の収入を増やした。これに対抗するためにも、日本は急ぐ必要がある。JETROアジア経済研究所の平野克己氏は「大豆は油もとれる、飼料にもなる、土を豊かにします。主食穀物の生産性が上がるでしょう」という。
モザンビークは産業の80%が農業なのに、生産性が低くて食糧自給ができてない。このプロジェクトで健全な農業への道が開けるかもしれない。日本はアグリビジネスに弱かったが、資源の開発も含めたシナジー効果で、政治・社会を安定させれば、日本にとってもプラスになると平野氏はいう。
アフリカ進出の日本企業1・5倍。ホンダはナイジェリアでバイク生産
平野氏は世界的な構造の変化をいう。これまで日本や韓国は原材料を中国に頼ってきたが、中国が使うようになって、世界のモノ作りの中心である東アジアで資源が足らなくなった。アフリカとどういう関係がいいか考える時にあるという。
アフリカ進出の日本企業は5年前の1.5倍に増えているが、文化や考え方の違いによるトラブルはつきものだ。ホンダはおととしからナイジェリアでのバイク生産を拡大した。従業員200人。だが、「後ろのタイヤがついてないオートバイを平気で(ラインに)流してきた」と工場長はいう。2本の生産ラインでミス減らしを競わせたら、合格率95.5%を達成した。工場長は「いまからです」という。
バイクをタクシーとして使うナイジェリアで、シェアはインド、中国が握るが、中国製は段ボールで届いた部品をバイクショップで組み立てている。これで約4万円。対してホンダは品質の良さを売りに5万円。
「リスク管理」も自前で、というのもある。住友商事が合弁でニッケルとコバルトの開発を進めているマダガスカルでは、4年前のクーデターで政権が崩壊し、翌年に鉱山で失業手当を求めるデモが起った。不満は直接企業に来る。「そこまでする必要があるのか」といいつつ、結局、2万人に失業手当を出した。
平野氏は今回の開発会議について、「これまでは『みなさんと一緒に話しましょう』だったが、日本がいまアフリカを必要としていることを発信していく必要がある。本気度が問われる」という。
54か国、10億人のアフリカは毎年5%以上の成長を続けている。一方で取り残されたままの多くの現実がある。20年もアフリカ開発会議を主導してきながら、いまになって「本気度」とは今まで何をやってきたのか。これをどう見るか、逆にアフリカの人びとに聞いてみたい。
*NHKクローズアップ現代(2013年月日放送「アフリカの成長をとりこめ 『チームジャパン』の新戦略」)