橋下徹・大阪市長の従軍慰安婦発言にはじまった騒動で、自民党など大阪市議会野党が「市政を混乱させた」と出した問責決議案で、きのう30日(2013年5月)の大阪市議会は終日揺れた。最後は否決されたが、それに至る道筋はけっこう生臭いものだった。
松井一郎・維新幹事長に「同日選挙」で脅され腰砕け
問責決議案は、自民(議席17)と民主系(9)、共産(8)に公明(19)が同調して、きのう朝の段階では与党の大阪維新の会(33)を圧倒する流れだった。ところが、維新幹事長の松井一郎・大阪府知事のひとことでがらりとかわった。松井は「問責は政治の世界では辞めろということです。民意を問うことになるんでしょうね」と、市長辞職・選挙と参院選との同時選挙をほのめかしたのだ。これで公明が及び腰になった。決議案から問責の言葉を除くよう3派と交渉になったが決裂し、うろうろしたあげく、内容は問責決議案と同じだがタイトルだけを「猛省を促す」とした決議案を提出した。
予定より5時間遅れた午後10時前、本会議は両決議案とも否決した。これに松井は「公明さんは大人の対応」と評価したが、大阪市民は「議員の怠慢。傍聴者も怒ってはりましたもん」「誰のためにやってはるの、税金使うて」「これだけたたかれてる橋下さんに勝つ自信がないということ」と厳しい。
橋下市長は「問責はある意味、市長と議会の対話を断ち切る最後通告みたいなものですから」という。市長選については「しません」。可決されてたらやるつもりだったかと聞かれても、「議会の中で解決したことですから」。慰安婦発言については「これで終わり。誤解をまねいたのは申しわけないが、言っていることは間違ってないと思ってる」
支持母体から「橋下と距離をおけ」
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「公明は維新と同調していたが、徐々に離れていました。慰安婦問題では、支持母体から距離を置いた方がいいという判断があったのだと思います」という。
しかし、ダブル選挙となると、「そちら(市長選)に関心が集まって、維新の勢いが復活するかもしれません。そうなると、(参院)大阪選挙区と比例の問題もあってマイナスになりかねません。もうひとつは前回の市長選で公明は自主投票だったのですが、ウラでは橋下さんを応援していました。その逆をやると支持母体から文句が出るということでしょう」
吉永みち子(作家)「松井さんの作戦勝ち。うまくやった」
赤江珠緒キャスター「橋下さんは損したのか、得したのか」
伊藤「プラマイゼロだと思いますね。橋下さんのキーワードはダメージコントロール。ダメージを受けた時に、別のテーマを設定して目をそらす。今回は公明の腰砕けでダブル選挙がなくなったのだから、問題は残ったまま」
つまり、維新にとって参院選は厳しい戦いになると、そういう分析だった。