世界一の長寿大国といわれる日本だが、超高齢化社会の進展にともなって、さまざな問題も起きている。医療の進歩はときには社会にひずみをももたらすが、それは生まれたての小さな命にも言えることのようだ。「クローズアップ現代」によれば、なんでも出生時1000グラム以下の極低体重で生まれるなどして、NICU(新生児集中治療室)での治療を必要とする赤ちゃんは年々増加中だ。幸いにして日本は新生児医療でも世界一レベルを誇っているので、命が助かるケースが多いが、しかし重い障害が残ってしまうこともある。
在宅ケアで親は不安と負担
NICUもベッド不足で、医療や医療費の観点からいえば、入院しなくても大丈夫な状態であれば、できるだけ早く退院して、在宅ケアに切り替えるのが望ましい。その一方で、親は不安を抱えたまま、退院する人が多いという。その後の生活も子供につきっきりになったり、こもりがちになってしまうことがある。子供の成長についての心配や苦労が絶えない親も少なくないようだ。
そうした時に、在宅の親と子供をサポートする仕組みのひとつが、デイケアや訪問看護である。たとえば愛媛県のデイケア施設では、重い病気を持った子供がスタッフや子供同士で触れ合い、遊ぶことができ、子供はそうした経験を通して成長したり、病気からめざましく回復することもあるという。
この施設に通う4歳児は生まれながらの心臓病に加え、心臓病の手術中に起きた脳梗塞の影響で、医師から寝たきりになる可能性が高いと宣告された。ところが、今では歩けるようになり、医師もびっくりだそうである。
65歳以上医療費の10分の1
こうした施設・サービスはまだまだ足りず、地域差も大きいという。スタジオゲストの埼玉医科大学小児科教授は「子供の在宅医療のサポートは、国がイニシアチブを取って進めるべきだと思います。65歳以上の老人1人当たりの医療費は、15歳以下の子供1人当たりの10倍になっている。ぜひ子供にも医療費を使って、より安心して住める社会を作ってほしい」と話している。
*NHKクローズアップ現代(2013年5月28日放送「幼い命を守れ~小児在宅ケア・地域の挑戦~」)