内部監察強化でモチベーション低下「仲間うちの飲み会も上司決済」
警察が内部監察を強化してもう14年になる。各地の警察で不祥事の隠蔽や事件への不適切な対応が続発したからだ。その後も不正経理問題など不祥事が起こるたびに管理対象が拡大され、最近では仲間うちの飲み会まで上司の決裁が必要なのだという。明らかに異常だ。
この閉塞感から辞めていく人もいる。おととし30代半ばで退職した男性は捜査畑で将来の幹部候補だったが、15年のキャリアを捨てた。「窮屈になりすぎました。何から何まで管理されて、ロボットみたい」。内向きの論理が優先し、保身に走る上司。「泥棒や悪い奴を捕まえるという話じゃなくて、事故(不祥事)防止ばかり。毎日頑張っても、自分が情けなくなってモチベーション下がる」
永井達也・警察庁人事課長は「業務管理はやり方を間違えると現場が萎縮してしまう。報告・決裁のあり方を見直すことで高い意欲と使命感を保っていける」という。はたしてそうか。同志社大の太田肇教授は「市役所や小中学校もそうですが、管理手続きが煩雑になって肝心の仕事ができなくなってしまうんです。上司の顔色を見て、挑戦するよりミスをしない方がいいとなってしまう。警察でそういう風潮がでることは危険です」と話す。
取材した社会部の清水将裕記者は「東日本大震災で救援に入った警察官は、感謝されてやり甲斐を感じたといっていました。逆に、普段そういうことはないということでしょう。地道な仕事を評価する必要があります」
太田教授の調査では、公務員の半数が評価され感謝されたとき「モチベーションが上がる」と答えているそうだ。「いろいろいわれても、大多数の国民は警察を信頼し感謝もしています。これをフィードバックする仕組みが必要なのです」
だが、日本の警察は秘密主義で、市民との距離をことさらに作っていることを忘れてはいけない。ボストンマラソンの爆弾事件のとき、犯人検挙の声明を発表する警察に市民が拍手していた。あの距離感が何より必要なのではないか。
*NHKクローズアップ現代(2013年5月16日放送「不祥事多発 警察で何が」)