「週刊現代」アベノミクス礼賛―煽るだけ煽って得するの誰?
『週刊現代』は毎週目を背けたくなるアベノミクス礼賛記事ばかりだが、今週はついに日経平均が3万円を超えるとまで書いている。正気の沙汰とは思えない。<富士山相場――。意味するところは2つある。 一つは、大相場が始まるタイミングが、富士山が世界遺産へ正式登録される予定の6月だということ。もう一つは、富士山が山頂に向かって急勾配を描くように、株式市場も急激な右肩上がりで暴騰していくということである。それも富士山の標高3776メートルにちなんで3万7760円、つまりは日経平均が過去最高値(3万8957円)くらいまで上がる可能性さえあるというのだ>
冗談も休み休みいってもらいたいと思うが、週刊現代は本気のようだ。金融関係者がこう語っているが、こういうときのコメンテーターは実名にしてもらいたいね。
<「我々の公的年金を運用する機関であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を動かすのです」
GPIFは100兆円もの運用資金を有する知る人ぞ知る「世界最大の機関投資家」である。現在はその6割ほどを日本国債に代表される国内債権に投資しているが、一方で国内株式の投資は1割超でしかなく、海外の年金機関と比べて運用が消極的すぎるとの批判がある。
「そこで6月の成長戦略にGPIF改革を盛り込み、外債や株式などに積極的に投資させようという案が出ているのです」(同前)GPIFが仮に運用資産の1割を日本株投資へ移し替えれば、 10兆円が株式市場に流れ込む。2割であれば20兆円。これが、巨額マネー注入説の根拠だ>
実はこの6月は、日本の株式市場で株価下落のリスクが大きい月だといわれてきたそうである。なぜなら、6月に電気料金や小麦などの値上げが一斉に予定されている。値上げの背景にあるのは円安による輸入物価の押し上げで、アベノミクスの負の側面が最も実感されるのは6月で、それを嫌気した個人投資家が株の売りに流れる事態が懸念されてきた。
そこでそうした不安を吹き飛ばすためにも、さらなる株高を演出する必要があるからだと、週刊現代は解説してみせる。そして、こう結んでいる。<市場はすでに、来たるべき6月に向けて、期待感をパンパンに膨らませている。情報武装は万全、決戦は6月だ。あとは安倍政権が政策を打ち出すその日に、動き出すだけである>
これだけ楽観的な編集部では、被災地の復旧が遅遅として進まないことや、原発事故が再び起こる危険性などには思いを致さないのだろう。バブルでいい思いをするのは一握り。多くは物価上昇や年金を削られることで、これまでよりも苦しい生活を強いられるはずである。弱者の味方とまではいわないが、週刊誌の原点を見失ってはいけない。