アメリカの人気女優アンジェリーナ・ジョリー(37)が乳がん予防のために両乳房の切除手術を受けたというニュースが日本にも衝撃を与えているが、どんな手術だったのか。アンジェリーナはがん予防検査で遺伝子に変異が見つかり、乳がんになる確率が87%と告げられ、乳房切除と再建手術を行ったとニューヨーク・タイムズに投稿した。どのような手術だったのか。聖路加国際病院ブレストセンター長の山内英子医師によると、「今では外の皮膚を残して中の乳線だけを取ってきて、それから他の何かで同じ膨らみを作る手術ができるようになりました」という。
がんの不安を抱えながら生きるか、母乳諦めるか―苦渋の選択
「とくダネ!」はアンジェリーナと同じ手術を受けたニュージャージー州に住むリジー・スタークさん(31)を取材した。遺伝子検査の結果、乳がんになるリスクが86%と診断され、「難しい決断でした。半年から8か月迷いました。たくさんのものを犠牲にしなければいけませんから」と語る。たとえば、授乳ができなくなる。胸の感覚もなくなるなどである。
遺伝子検査を受けたのは、母親と祖母が30代で乳がんを発症していたことだ。結婚した27歳で受診した。「常にがんが見つかるかもしれないという強い不安を抱えて生きるよりも、その不安を取り除こうと思いました」。夫も胸を失うことよりも、生きて長く一緒に生きることを望んだ。「悲しい決断だったけれど、今は満足しています」
医師からは40歳までに卵巣の切除をした方がいいといわれているが、まだその手術はしていない。子どもを持とうかどうか決めていなし、卵巣を取ると一気に更年期障害になるというので悩んでいるという。
費用は遺伝子検査30万円。除去・再建に500万円
日本の検査や手術はどうなっているのか。山内医師は「いくつかの病院、数えるだけですが、病院の倫理審査委員会というものできちんと議論していっているところはいくつかあります」という。10年以上の歴史を持つアメリカと違い、日本ではまだまだ症例が少ないようだ。
アナウンサーの梅津弥栄子によると、「街の声を聞きますと、まだがんになっていない乳房にメスを入れるということに驚いていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいますが、一方でその有効性やリスクをきちんと把握したいという方もいらっしゃいました。ただ、問題はお金です。アメリカでは遺伝子検査に30万円、切除、再建手術と合わせて500万円かかるという現状です」
乳房切除手術のデメリットは(1)母乳が出なくなる(2)人工物を入れることによる感染症のリスク(3)皮膚の感覚が鈍くなる―などがあげられるという。
コメンテーターの中江有里(女優、脚本家)は「一歩踏み出すには勇気がいるなという感じですね」と話す。選択肢が増えることにもなるのだろうが、難しい判断が増えることでもあろう。