リチウムイオンバッテリーの火災事故が相次いだボーイング787の運航が、日本では来月1日(2013年6月)から再開される。問題のバッテリーは本当に改善されたのか。安全は確保されているのか。
対策は不燃性のテープ入れただけ
キャスターの国谷裕子は「バッテリー発火の原因はまだ特定されていません。そうした中で、なぜ運航を再開するのかという航空関係者の声もあります」という。NHK社会部の古川恭記者はこう説明する。
「問題となったバッテリーは予備電源として搭載されていました。通常、旅客機の電源はジェットエンジンが回ることで発電が行われますが、このシステムが停止した場合の予備でした。この電源から出火し火災事故が起きました。
ボーイング社はこのバッテリーの仕切りに不燃性のテープを入れ、火が出た場合でも他に延焼しないように、バッテリーボックスの下に排気口を作る改良を加えています」
国谷は「それだけのことで本当に安全が確保されたといえるのでしょうか」と不安そうだ。たしかに、ボーイング社幹部などを集めて行われたアメリカ国家運輸安全委員会の公聴会は背筋が寒くなるものだった。ボーイング社幹部は「バッテリーにクギを刺し、クギを通して電極から電気を流したところ発火はなかった」と証言した。そんな原始的なテストでもう大丈夫といわれても、納得できるものではない。
ジャンボ機組み立てには2週間。B787はたった5日で製造
古川は「B787の生産体制に疑問の声が上がっています。これまではジャンボ機1機の組み立ては2週間前後かかりました。でも、B787は機体をパーツに分け外部に製造委託して5日間で製造しています。この生産体制に問題がなかったのか、疑問視されています」と説明する。
国谷はゲストの鈴木真二(東京大学工学部教授)に「もし、また事故が起きたら、その責任は誰が取るのでしょうか」と問う。鈴木教授は「国として安全性が確保されている生産体制かどうか、確認されていませんでした。そこが一連の事故の盲点となっていました」と話す。
国谷「安全性を確保するためには、どういう体制が必要なのでしょうか」
鈴木教授「効率や経済性が優先され、安全性を確認できる人がいません。安全性をしっかり担保できる体制が必要です。運航しながら事故が起きる可能性を探るというのが現状です」
つまり、バッテリー火災の原因はわからないけれど、とりあえず不燃性の仕切りを入れたら発火しなかったから飛ぶということだ。こうなると、バッテリーばかりではなく、ほかの部分でもまだ故障は起きていないけれど、不具合のままという箇所があるのではないか。落ちないことをひたすら願うばかりだ。
ナオジン
*NHKクローズアップ現代(2013年5月13日放送「『安全』は取り戻せたのか B787」)