東日本大震災からの復興のために、公共事業や雇用支援に使われるはずの復興予算が、あいかわらず抜け道を通って全く関係のないところに使われている。見つかった新たな手口は、公益法人や自治体が管理する「基金」だった。シロアリはめげない。まさに「浜の真砂は尽きるとも」だ。
大分県の林業整備「オールジャパンのつもりでやってる。流用の意識ない」
政府が2011~12年度につけた復興予算は17兆円である。うち10兆円は復興増税で、25年間にわたって所得税を2.1%上乗せすることで確保したものだ。復興のためと国民も納得した。ところが、沖縄の道路や捕鯨対策などに使われているとわかって、今年度からは原則として被災地以外では使えなくしていた。
しかし、約20の基金に配られた1兆2000億円が被災地以外でも使えるようになっていた。基金というのは、複数年にまたがる事業の予算の受け皿で、年度末の決算が要らず、使い道もあいまいになるという。
◇ 大分の林道整備は「オールジャパンで復興資材増産。流用の意識はない」(大分県)というのだが、2010年の出荷は6割が九州で、東北にはほとんど行っていない。林業整備全体で1399億円。
◇ 千葉では失業者の再就職支援に使われていた。名前だけは「震災等緊急雇用対応事業」で、2011年度に2000億円がついたが、震災後に失業した者なら被災とは関係なしに対象となっていた。
◇ 鳥取のご当地アイドル「バードプリンセス」は「国際まんが博」PRのために結成したもの。人件費約4000万円が復興予算だった。「被災者の方を優先雇用と募集した」(鳥取県)が、むろん被災者なぞこなかった。
ほかにも新卒者就職実現プロジェクト、節電支援など怪しいものはゾロゾロとある。厚生労働省は「復興予算は被災者雇用にとしているが、最終判断は自治体が」という。つまりはどちらもシロアリなのだ。さすがに菅官房長官は「基金について予算の執行状況を調査中。結果がそういうことであれば、執行停止も含めて考える」という。
細かい使い道問われない「基金」に1兆2000億円
土居丈朗・慶大教授は「基金というのは、いったん決めてしまうと使い道を細かく問われない。基金をつくればあとは使ったもの勝ち」という。
司会の羽鳥慎一「流用の意識はないといってましたね」
吉永みち子(作家)「実際どこから出たお金かわからないままということですよ。抜け道はわかっていて作ったんでしょうね」
取材した井口成人リポーターは「使い道が適正でなかったら、事業停止あるいは返金をもとめるべしという専門家もいます」という。
飯田泰之(駒澤大准教授)「政府予算の単年度主義の弊害から基金は重要視されるが、基金でも年度ごとの会計報告が必要ですよ。見過ごしてきた責任は民主にも自民にもある」
羽鳥「誰のための復興予算なんだ」
吉永「いたちごっこ。それぞれの省庁の予算でやってほしい」
要するにシロアリだ。予算こそは役人のレゾンデートル。国がどんなに苦しかろうと、自分の予算分捕りに命をかける。