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ユニクロ「世界統一賃金」批判―労働者苦しめた初期資本主義と同じ

   今週は『週刊現代』と『週刊ポスト』が合併号。両誌で「ユニクロは『ブラック企業』か『グローバルカンパニー』か」(週刊ポスト)、「大論争『ユニクロはブラック企業なのか』私はこう考える」(週刊現代)とやっている。

   ユニクロは入社して3年以内に辞めていく社員が半数にも上るため、ブラック企業ではないかという批判が噴出しているが、柳井正社長は朝日新聞などで否定している。だが、その中で社員の賃金を世界で統一すると発言して、また波紋を広げている。週刊ポストはまず、世界統一賃金の仕組みとはどんなものか整理してくれている。

<現在、ユニクロの「グローバル総合職」社員は世界に約5000人いる。(中略)執行役員や上級幹部ら合わせて51人の上位7段階はすでに世界で「完全同一賃金」になっている。完全同一賃金とは、例えば、日本円で年収5000万円のグレードに属する海外採用社員は、通貨や物価が違っても、その額に相当する年収を受け取ることができるというものだ。
   それをさらに下位のグレードにも広げていこうというのが、今回のユニクロの構想である」
   信州大学経済学部真壁昭夫教授はユニクロ戦略を、こう分析して評価している。
   「単純労働に従事する若い労働力ならば集めるのはそう難しくない。しかし、1つの店舗をマネジメントする能力を持った優秀な人材は希少で、高賃金などのインセンティブがないと集めることができない。
   ユニクロの試みが成功すれば、現地国の有能な人材の発掘や、すでにいる人材の底上げ効果にもつながる。組織内の競争も激化し、生産性が上がって、企業収益にも貢献するはずです」>

   週刊ポストは柳井戦略に一定の評価をしながらも、こう結んでいる。<終身雇用システムによって高度経済成長を成し遂げ、「総中流化」を果たした日本の姿は、世界に「奇跡」と認められた。人の何倍も稼がなくても、働くことに喜びを感じ、多くの日本人が自分を「幸福だ」と感じていたはずだ。

   柳井氏も「日本人のDNAが武器になる」と感じているのなら、日本企業だからこそ生み出すことができる、新しい雇用の形もあるのではないか>

   週刊現代は多くの識者に語らせているが、その多くは批判的である。その一つ京都大学名誉教授の竹内洋氏の批判を紹介しよう。

<「残念ながら、柳井さんの経営理念には、歴史に対する不勉強、文化や社会に対する無理解を感じざるを得ません。職位が下の社員に成果求め、それがかなわないなら低賃金に甘んじろというやり方は、労働者を苦しめた初期の資本主義時代の考え方ですよ。(中略) 企業が儲かるのは大切なことです。しかし、そのために『Grow or Die』が必要ですか? 多くの精神疾患者を出し、まるで産業廃棄物を捨てるようにヒトを吐き出していくやり方が、グローバル企業だから仕方がないと、許されることでしょうか。企業は公器。品格のある成長を、ユニクロには求めたいと思います」>

   週刊現代は結びでこう切り捨てている。<自分だけが生き残れば、あとは死んでも構わない。それがユニクロの経営哲学なのであれば、ブラック企業と呼ばれても仕方がないだろう>

   私は先にも書いたが、大学を出たばかりの新入社員が試験に合格すれば店長に昇格する「制度」には無理がある。世界統一賃金もいいだろうが、「人を育てる」という意識がない企業には人材は育たない。5年、10年後のユニクロに不安を覚える。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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