きのう23日(2013年4月)、中国の海洋監視船8隻が尖閣諸島の領海に侵入して日本の漁船を追い回し、日本の巡視船が割って入るような事態が12時間も繰り広げられた。この漁船、ただの漁船ではなかったのだが、リポートは深くは触れなかった。テレビを見ていた人はどう受け止めただろうか。
操業ではなくマスメディアも乗せたデモ。はっきり言わない「モニバド」
リポートは「昨年9月の国有化以来、中国船は最多」と伝えた。それには違いないが、日本の漁船10隻というのも異例だし、これに巡視船が13 隻とゴムボートが6隻というのも普通じゃない。取材のヘリコプターまで飛んでいたのは、騒動は予想されていたということだ。
漁船に乗った共同通信の記者が「こんな狭い海域に30隻もの船が…」と伝えていたが、そもそも記者が乗った漁船は政治団体のチャーターだ。 中国がこれを察知して監視船の数を増やし、これに巡視船が対応してというお話だった。海上保安庁のボートの漁船への呼びかけも、「乗船者の安全については、船長が責任をもってください」だった。乗っていたのは漁民ではなく、漁船も漁をするわけでもなく、日の丸をつけてやたら走り回るだけ。完全な政治的挑発である。
「モーニングバード!」はデモを行った団体の説明はせず、東海大の山田吉彦教授が「今回が第一歩。いつまた起きてもおかしくない。中国は中国の法律を適用しようとしている」と危機感を煽る。
中国のテレビはこれを「中国の監視船が日本の漁船が活動しているのを発見し、領海侵犯の証拠を集め、主権を守った」と伝えた。日本の右翼分子約80人が10隻の漁船に乗り込み、日本政府と二人羽織だなどという。
中国船「日本領海に入る」から「中国領海から日本船追い出す」にレベルアップ
この日は超党派の国会議員168人が靖国神社を集団参拝して、これまた過去最高の数となった。参拝した自民党の高市早苗政調会長は「日本人の問題。外交問題になる方がおかしい」と息巻く。それはその通りだが、相手がある以上、それでは収まらない。中国がとくに参拝を問題にしている麻生副総理は、「毎年2、3回(参拝に)うかがっている。いまさらいわれる話ではありません。海外の反応は向こうの反応であって、外交に影響はない」という。首相に次ぐ政府の要人が参拝したから事が大きくなっているのに、これが副総理の言うことか。
中国外務省は「日本軍国主義の侵略の歴史を否定する企みだ」といい、韓国は外相訪日を取り止めて、「日本の指導者は靖国参拝を周辺国がどう考えているか、よく考えてほしい」と述べた。米国政府も懸念を表明している。
司会の羽鳥慎一は「これまでと違うのは、中国の監視船対日本の漁船、これを海保が守るという形」というが、操業中の漁船ではないことをはっきりいわない。
中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聡は中国の出方を、「尖閣諸島を『攻める』から『守る』への第一歩」といった。これまでは自分たちが尖閣へ「入っていく」だったのが「追い出す」方になったというのだ。
羽鳥「自国の領海から外国船を追い出したよということですね。靖国参拝との関係はありますか」
富坂「靖国は気にしているが、海の問題は別でしょう」
羽鳥「海保の巡視船がいなかったら、どうなったのでしょう」
富坂「最終的には逮捕したりするでしょう。しかし、すき間はいっぱい空いてる。今回は挑発してこうなったんで、戦略をきっちり考え直さないといけないと思います」
少なくとも、「右翼うんぬん」に関しては中国の報道が正しい。しかし、それをはっきりいわない日本のテレビを見ている日本人は、憎悪だけが増幅するだろう。危ない話だ。