櫻井翔版「家政婦のミタ」―残忍で異常な仕打ちの裏に意味深な決めゼリフ

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   櫻井翔主演の連続ドラマ「家族ゲーム」(フジテレビ系水曜よる10時)が17日(2013年4月)にスタートした。原作は本間洋平の小説で、これまでにも松田優作の主演で映画化、長渕剛の主演でドラマ化されたことがあるが、このドラマはタイトルは同じだが、まったく違うストーリーだ。より刺激的で毒々しく、扇情的で、大ヒットドラマ「家政婦のミタ」の男性家庭教師版といえば分かりやすいか。不気味で謎めいた人物設定、周囲に妥協しない生き方など共通点は多い。

ひと皮むけた優等生アイドル「今までにない一面お見せします」

   かつて野島伸司脚本の連続ドラマ「人間・失格~たとえばぼくが死んだら」が、中学生の暴力、いじめ、自殺をセンセーショナルに描き、「子供に見せたくない番組ワーストランキング」入りした。家族ゲームも早晩ランキング入りしそうだ。描かれるのは、生きづらい世の中で、他人を思いやる余裕もなく流されていく中学生たちである。教師が生徒をいじめて自殺に追い込む日本で、ようやくドラマが現実に追いついて来たような話がてんこ盛りになっている。

   櫻井演じる家庭教師・吉本は手に負えない変人だ。教え子に暴力をふるう、甘言でだますなんていうのは朝飯前で、金のために他人を陥れることも当然だと思っている。目的のため私利私欲のためには、非常識、非合法なことでも躊躇なくやってのける。そんな唾棄すべき人物を明るくさわやかな優等生アイドルが演じている。しかし、櫻井の演技は違和感のなさを感じさせない。役者としても一皮むけたといったところか。製作発表会見で、櫻井が「家族ゲームのタイトルに反して、家族揃って見てるとちょっとひりひりする作品」「自分自身の今までにない一面をお見せできる」とコメントした通りだ。

本当の顔は誰も知らない…目が離せないこれからの展開

   落ちこぼれで引きこもりの次男・茂之のために、両親はネットで見つけた自称「東大合格率100%の天才家庭教師」というふれこみの吉本を雇った。吉本には茂之を学校に通わせ、長男・慎一が通う名門校に進学させる条件が課せられた。すでに5人の家庭教師が匙を投げ、逃げ出している。父親から「1週間以内に登校させれば、ボーナス10万円」と持ちかけられ、自信満々の吉本は「5日で結構。ただし、口出しは一切無用」と答え、絶妙な駆け引きや型破りな行動で見事クリアするのだった…。

   茂之が登校拒否になったのは、学校でいじめられ、唯一の親友に裏切られて絶望したのがきっかけだった。そんな彼をトイレなし、風呂なし、窓もドアも開かない部屋に閉じ込めて兵糧攻めにする。同時に、吉本は茂之の学校を調査して、茂之にまつわる話を聞きこんでくる。それを茂之に吹き込み不安を煽る。

   熱血先生や熱い友情、固い絆といった学園ドラマに不可欠なものは一切出てこない。見るに耐えないいじめのシーンや友情のかけらもない殺伐とした学校生活、吉本の仕組んだ罠にかかってもがき苦しむ茂之や家族の姿など、スカッとする要素もまるでない。それをひっくり返すような吉本の決め台詞が印象に残っていく仕掛けになっている。

「何でも一人で背負い込むな。何があっても俺はお前の味方だ」
「こんな世界にも希望はある、確かに。だが、現実はお前が思っているより残酷なんだ。だから強くなれ」

   虐待にしか見えない仕打ちにそれぞれ意味や理由があることを暗示しており、今後目が離せなくなるという寸法だ。怖いもの見たさの視聴者を釘付けにし、より一層の盛り上がりが期待できそうだ。

知央

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