上手いこと世渡りする女の子と、離婚してもすぐに彼氏ができる女の子は共通点があると思うんだけど、どう?―大好きなホタルイカの沖漬けをほおばりながら彼女は言う。今年35歳。勤めている会社から契約の継続が危ぶまれ、ピンチに陥っている。結婚を機に前職を離れ、離婚後1年かけて再就職活動をしてようやくありついた職場だ。契約社員ではあるが仕事内容は社員と変わらず、本人もやりがいを感じていた。上司からもいずれ正社員にというニュアンスもほのめかされていると数か月前は嬉しそうに話していた。
それなのに、年度が変わってすぐ次年度の契約更新について少し待ってほしいとは何事だと憤慨していた。これじゃぁ、まったく話が逆じゃないのよ。人の人生なんだと思ってるのかと、彼女は絶対に会社に居座る覚悟で、毎日ちょっとだけ早く出社して残業も多く引きうけるようにしているという。ちなみに、離婚して以来、恋人はかれこれ5年いない。
そんな彼女の周りに、嫉妬を越えて神的存在に思える女の子がいるらしい。それが、友人と入社時期もほぼ同じで契約社員として働いているA子ちゃんだ。A子ちゃんは誰に対してもとにかく明るい。周囲からは仕事ができないお荷物社員と思われている人に対しても、積極的に話しかけるし応対も明るい。けれど、上司を含めての飲み会では「マジ、あの仕事ってありえないですよ~」と毒を吐く。
「契約打ち切り」「正社員化」の分かれ道
友人はこれはブラックA子、裏表のある子だと思っていたらしい。ところが、一緒に仕事をしていくと、このブラック部分が「素直で正直にものを言い裏表のない子」だと上司には評価されていることに気が付いた。ものは言いようだ。同じようにしていても、あいつは裏で愚痴ばかり言っていると思われる人と、素直でよろしいと高評価される人がいる。
その違いはいったいなんだろう。ある日、友人は思わぬ話を聞くことになる。「わたし、社員にならないかって実は言われているんです。でもどうしようか正直悩んでいて…」
友人にとってはかなりショックな話である。自分は契約継続を打ち切るような示唆をされているにも関わらず、こいつには正社員の話だなんて。こみあげてくる怒りと絶望をなんとか押さえこんで、なぜ悩んでいるのかを聞いたところ、今度こそ失敗したくない結婚生活を送りたいからと、ものすごい切り返しが待っていた。
実はA子ちゃんは20代後半ではあるが離婚歴があり、今の職場も2年前に離婚してから入って来ていた。離婚の原因は夫婦生活のすれ違い。だからこそ、今度の結婚は上手くやりたい。ということで、正社員にはならずに契約社員のままで新しい結婚生活を送りたいらしい。もうこの時点で友人は過呼吸なんじゃないかと思うほど、息も絶え絶えで苦しかったらしい。あの子には完敗。なにもかもが上手くやれている。実は神なんじゃないのか。いつの間にやら友人にはA子ちゃんに後光がさして見えたという。
とにかく明るい、正直で素直な物言い
そんでもって彼女の結論。世渡り上手で離婚後すぐに新たな結婚ができる女性は、とにかく明るい。自分のことを特別視することもなく、他人をうらやんだり妬んだりしない。とうてい自分たちにそんな道徳の教科書に出てきそうな精神は持ち合わせていないと溜息。少しでもマネできることがあるとしたらなんだろう。服装も質素なA子ちゃんを思い出した友人が言った言葉は、「傷のなめ合いの女子会を辞める」だった。
モジョっこ