ボストン・マラソンをねらった爆弾事件は、8歳の男の子と29歳の女性、ボストン大の大学院生が死亡し、重軽傷は183人のうち17人は重体だ。オバマ大統領も「テロ行為」と認めたが、犯人像はいまひとつつかみきれない。専門家の見方も「組織的な犯行だ」「いや、素人だ」と分かれている。
黒リュックの人物がゴミ箱の中にセット
爆弾はゴミ箱の中にセットされていた。黒いリュックに入った圧力鍋の中にベアリングに使うような小さな金属球が詰められ、殺傷能力を高めてあった。ただ、起爆はキッチンタイマーが使われていたという情報もある。最初の爆発と2回目の爆発の間隔は12秒だったが、同時爆発をならった可能性もある。
警察は防犯カメラの映像などから犯人割り出しを急いでいて、「黒いリュックを背負った人間」がとっかかりになる。当局は5万ドルの懸賞金を出して有力情報を求めている。FBIは爆弾は爆発した2つだけで、拘束者については明らかにできないという。
レースは午前9時の車イスランナーから5グループに分かれてスタートし、トップランナーは男女とも正午前後にゴールして一段落していた。爆発のあった午後2時50分は、市民ランナーのスタートから4時間後で、まだ数千人が走り観客も多かった。テロはまさにここをねらったわけだ。
米国内の極右、カルトなら連続犯行心配
爆弾のつくりをどうみるかで、犯人像も大きく違ってくる。中東などで横行するのは携帯電話を使った起爆だが、キッチンタイマーとなると話は違ってくる。12秒というズレも誤差の範囲かもしれない。専門家も「カメラ効果を狙った計画性と緻密性がある」という見方と、「プロではない。稚拙な素人の仕事」「高性能爆薬だったらもっと死傷者が多い。愉快犯か」という見方に分かれる。
圧力鍋爆弾はアフガニスタンのテロリスト養成所で教えている手口ともいわれる。2010年にタイムズスクエアで仕掛けられた(未遂)爆弾はこれで、パキスタン系の男が逮捕されている。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「爆発物の威力からいって、訓練されたテロという印象はない」という。
黒井氏はテロは4つのタイプに分かれるという。イスラム系では、いわゆるテロ組織とホームグロウンがある。ホームグロウンは移民の2世、3世で、2005年のロンドンテロがこれだった。また、米国内特有のテロでは極右とカルトがある。どれも過去に大きな爆弾事件を起こしており、とくに極右はほとんど単独犯だ。イスラム系は犯行声明が出るのが普通だが、今回はまだない。右翼・カルトとなると、先のノルウェーの乱射とかアトランタ五輪の爆弾とか、 1人で自分の世界に入り込むケースも多く、またいつでもできる。
司会の羽鳥慎一「オバマ大統領はどう対応するんでしょうね」
萩谷順(法政大学教授・ジャーナリスト)「威信を傷つける目的ははっきりしていますよ。ビンラディンの殺害でテロとの戦いは終息段階とされていたが、もしこれが海外の勢力だとすると、もう1回態勢を立て直さないといけなくなります」
当局の慎重な動きは、このあたりを反映しているのかもしれない。