見えてこない「ヒッチコックはなぜそこまで執着したのか」
ただ、その姿がステレオタイプに映ったのは否めない。似たような構図で描かれた『ブラックスワン』で、ナタリー・ポートマンが抱えたほどの苦悩が見えてこない。ヒッチコックはどうしてそこまでサイコにこだわったのだろうか、なぜエド・ゲインに執着したのかという肝心な点が見えてこない。サイコは完成し、傑作と評されたのを誰もが知っているから、破滅へ向かうヒッチコックがリアルに映らなかったのかもしれない。
サイコの製作秘話や奇抜な宣伝方法は興味深かった。観客がパニックで暴れるかもしれないので、劇場に警備員を配置したというエピソードはリアルだ。サイコという傑作映画をより一層楽しむための映画、そう位置付ければ、この映画も十分楽しめるだろう。
野崎芳史
おススメ度:☆☆☆