質屋を騙って、実は高齢者の年金に食らいつく金融業者が横行している。医療費や冠婚葬祭のちょっとした不如意からが多いが、高い金利を払い続けているにも関わらず、利用者の多くが「助かっている」という。どういうことなのか。
福岡市の74歳の男性は、糖尿病などの治療でおととし(2011年)から「偽装質屋」通いがはじまった。リサイクルショップで購入した2000円の時計を質草に10万円を借りた。2か月に1度の年金支給日に口座引き落としで返済する。10万円に利息が2万4000円、年金の残りは3万円だ。足らないからまた10万円を借りる。その繰り返しである。金利は96%にもなるが、男性は「自動的に払うから借金は残らない。借りたという感覚がなくなる。汚いよな」という。
偽装の関係者は「収入以上の貸し付けはしないし、質屋でとれる金利の範囲内だ。こちらから頼むわけではない。こういう条件でいいですかと助け てやってるようなもの」という。
生かさず殺さず長期にわたって搾取
年金支給日には朝早くから預金通帳を片手にお年寄りが雑居ビルに向かう。記者が「金利高くないですか」と聞く。「高いよ。承知で行ってる。金がないからなくなったら困る。貸してくれるところあったら、教えて」
76歳の女性は夫が入院中だ。消費者金融には年齢で断られた。離れて暮らす子どもには頼れない。「今の子どもは自分の生活でいっぱい。迷惑はかけられん」という。「金利は高いが、誰にも迷惑をかけずに金が借りられる。偽装質屋だけが頼り」
昔ながらの質屋は品物で貸す。3か月以内に返済すれば品物は戻ってくる。流れれば品物を処分して利をとるが、リスクがある。保管、売却のリスクもあるから、金利は最高109.5%まで認められている(質屋営業法)。
偽装質屋は年金が狙いだ。自動振込契約だから回収は確実。いつまでも頼らざるを得なくするのがねらいだ。品物は形だけで、金利は最高をいただく。にもかかわらず、お年寄りに被害者意識は薄い。「生かさず殺さず、長期に搾取」と取材した記者はいう。
平成19年に多重債務者が社会問題になったとき、グレーゾーン金利が撤廃され、最高金利も29.2%から20%に引き下げられた。そこで貸金業者は金利の高い質屋に目をつけたのである。NHKの調べでは、いま15の都道府県で偽装質屋が確認されているという。