大阪市の橋下徹市長が1度は和解した「週刊朝日」の記事をめぐり、発行元の朝日新聞出版や親会社の朝日新聞社に慰謝料を求めて提訴することを明らかにした。週刊朝日が4月12日号(2013年)で掲載した橋下市長を揶揄するような記事が再び怒りに火をつけたようだ。
蒸し返しの原因となったのは「石原慎太郎代表の復帰と賞味期限切れで焦る橋下市長」と題し、橋下がかつて出演していた「行列のできる法律相談所」(日本テレビ系)などのバラエティー番組に登場していることを影響力の低下と関連付けた記事だ。
「すべて納得できました」と言っていたはずだが…
橋下はきのう10日(2013年4月)の会見で、「加害者と被害者は永遠につきまとう話。まったく忘れてしまっている」と週刊朝日と朝日新聞を批判し、「お金の話をするのはいやらしいかなと控えていたんですが、しっかり慰謝料請求して、きれいさっぱりスッキリするのがいいじゃないんでしょうかね」と、訴訟にいたった事情を説明した。ただ、訴えの対象となるのはこの記事ではなく、1度は水に流した昨年(2013年)の記事だ。
週刊朝日は昨年10月26日号で、橋下の肉親の系譜を探る記事を掲載したが、橋下の抗議を受けて朝日新聞出版の社長が引責辞任し、朝日新聞社も第三者機関の検証結果を報告するなどして謝罪した。橋下もそのときは「すべて納得できました」と了承していたが、その記事が法廷の場で争われることになったのだ。
「口うるさい政治家には触れるな」メディア萎縮の心配
1度和解したにもかかわらず、遡って慰謝料を請求できるのかという疑問について、プライバシー侵害に詳しい落合洋司弁護士は「いったん成立した不法行為を謝ったからといって、遡って違法性がなくなるわけではない。違法性があるということになれば、損害賠償を命じられることになるはずだ」といっている。
スタジオではメディアと政治家の関係が話題になった。司会の小倉智昭は「橋下さんの話でわかるのは、加害者と被害者の立場はずっと変わらないということ。たしかにそうかなと思うが、加害者の配慮は続いて当然となると、メディアは橋下さんをあまり糾弾できなくなるということが生まれてくる」と心配する。キャスターの笠井信輔アナがこれを受け、「私たちマスコミとしては、いろいろ口うるさい政治家がいるからあの人には触らないようにといった姿勢はとってはいけない。正すべきは正すという姿勢を貫いていく必要はありますね」と述べていたが、その正論、貫いてほしいものです。