全国の書店で1年間に発売された本の中から、客に薦めたい作品を書店員が投票で選ぶ「2013年本屋大賞」が9日(2013年4月)に発表され、百田尚樹著「海賊とよばれた男」が決まった。本屋大賞は今年で10回目で、598人の書店員が1次審査に参加して11作品がノミネートされ、さらに書店員307人の2次審で「海賊とよばれた男」が選ばれた。
出光興産創業者・出光佐三モデルの伝記風歴史小説
最近は直木賞受賞作でも5万~10万部の売れ行きに留まっているのに対し、本屋大賞受賞作は30万部も売れたものもある。今や「本が最も売れる文学賞」といわれている。受賞の挨拶に立った百田も「始めていただいた賞で、直木賞よりはるかに素晴らしい。文学賞で最高の賞です」と我が田に水を引く。
「海賊とよばれた男」は、出光興産の創業者・出光佐三をモデルにした伝記風歴史小説だ。受賞前にすでに41万部を突破する売れ行きで、受賞でさらに32万部の増刷が決まっている。百田本人は「今回は絶対に取れないと思っていました。本屋大賞に投票してくれる書店員は6対4ぐらいで女性が多い。作品はガチガチの硬派で女性が全く出てこないんです。出てくるのはオッサンばかり。女性票は獲得できないだろうと…。ところが、結果は女性書店員が相当入れてくれたんです」と話す。
「面白い本がない。じゃあ、自分で書こう」
百田の会ったことがあるという司会の加藤浩次は、「ある時期面白い本がないと思いはじめて、本を読まなくなった。で、自分が書くしかないと思って書き出したらこうなったって。これすごいですよね」という。
作家になって7年目という百田のデビュー作は、2006年に発表した「永遠の0(ゼロ)」で180万部も売れ映画化が決定している。受賞作を読んだというキャスターのテリー伊藤「立て続けに迫力ある内容が出てくる。これを映像で見せるとなると、相当な力が必要ですね」
かつてオイルショックの時、経済担当記者を年に1度招いて、出光佐三の記者会見が恒例となっていた。2回ほど出席したが、特段のニュースがあるわけでもなく、最初は何のための記者会見か怪訝に思ったほど『出光佐三独演会』といった印象だったのを思い出す。