教育行政に関して次々と問題提起をする橋下徹大阪市長が、今度は「名ばかり校長」に批判の刃を向けた。大阪市立東高校にはなんと校長が18人、教頭が105人もいるというのだ。「この感覚がおかしい。教育行政のゆがみは限界まできている」と怒りをあらわにしたが、どうやら全国的に行われている慣行のようだ。
大阪市立東高校の教頭「うちに105人も教頭がいると初めて知りました」
1つの学校に教頭が105人もいると聞いても、まあ、にわかには信じられないだろう。その東高校に行くと、当然、教頭は1人しかいない。応対した教頭は「教頭は私1人です。105人もいるということはマスコミの問い合わせで知りました。詳しくは教育委員会で確認してください」と困惑している。教育委員会に行くと、「校長」の1人が出てきた。名刺の肩書は「大阪市教育委員会事務局 指導部 中学校教育担当 課長」とあり、仕事はデスクワークだ。「役所で業務していますが、兼務している肩書は東高校の校長です。(校長の)肩書がついているという認識はないんですが」とこちらも戸惑い気味だ
どうしてこんなことが起こるのか。実はカラクリがある。校長や教頭が市の教育委員会に異動すると給料が下がる。これを防ぐために、実際の勤務先は教育委員会の職員だが、身分は校長や教頭にして教育職の給料を維持するのだ。総務省の調べだと、高校の教育職の平均給料は39万6989円、一般行政職は33万9485円で約6万円の差があり、これを調整する必要があるわけだ。共済組合も別になっていて、異動のたびに出たり入ったりするのが煩雑という事情もある。
尾木直樹「給料体系が違い市職員の方が少し低い。そのための裏技」
リポーターの田中良幸が市教委に取材すると、(1)昔から変わらない制度(2)事務手続きを煩雑にしないため(3)異動の度に給料が変動するのは望ましくない―という説明だった。千葉県や札幌市では教員をいったん退職するというところもあるが、多くの自治体で似たような方式をとっており、文科省も「法律上は問題ない」といっている。
教育評論家の尾木直樹は「かなり工夫された裏技に近い方法で、しかし、違法ではないということで行われてきたのではないですか。給料体系が違い市の職員の方が少し低い。給料の違いは退職金にも影響し年金にも関わってきますからね」と話し、給料体系の違いの埋め合わせのための便宜的な手法という。
コメンテーターの古市憲寿(社会学者)「日本中どこでもあることで、大したニュースじゃないというか、橋下さんがなんで怒っているかわからない」
そういわれては身も蓋もないと思ったのか、キャスターの小倉智昭は「事なかれ主義で、自分たちで適当に解釈してやっていくことに怒りを感じているんだと思います。そういうことを根本的に変えていかないと改革にならないでしょ、ということだと思いますよ」とフォローした。
教育委員会というところ、知らないことがたくさんある役所だということがまたわかった。