先週金曜日の22日(2013年3月)、北朝鮮の宣伝用ウエブサイト「わが民族同士」が、勇ましい画像を流した。「3日で終わる短期即決戦」と題し、韓国を制圧するには3日で十分という軍事シナリオだ。一斉砲撃する戦車の列やロケット砲。国境を越えて突撃する兵士たち。まるで第2次世界大戦直後のソ連映画みたいだ。むろん大部分がCGだ。
米太平洋軍も大量破壊兵器で木っ端みじん
「短期即決戦1日目」は、発射命令を受けた砲兵部隊が30分間、240ミリ放射砲や中距離砲25万発を発射し、地対地短距離ミサイル1000発を米韓連合軍基地に向けてどしゃ降りのように浴びせるとしている。同時に、5万人の兵士が陸と空から奇襲攻撃をかけ、駐留アメリカ人15万人余りを捕虜として捕らえることになっている。
「2日目」は人民軍が韓国への総攻撃を始める日だ。ソウルの空撮映像に、空挺部隊が落下傘降下する映像が組み合わされ、市街戦で韓国軍を蹴散らし、戦車4600台と装甲車3000台が怒濤の進撃をする。米太平洋軍を強力な大量破壊兵器で先制攻撃し、一瞬にして制圧する。
最終の3日目は、ソウル市民は大混乱に陥り各都市のインフラも壊滅。これを人民軍が占領して治安を維持し、インフラ復旧の「安定化作戦」が行われる。米軍部が北朝鮮侵略シナリオを公開できず、戦々恐々とする理由が判ると付け加えた。朝日に向かって兵士たちが銃を掲げて、映像は終わる。
日本に対しては、労働新聞は「滅亡の運命はアメリカに従う日本だ。革命武力の標的で日本も無事ではない」と書く。これは15日に安倍首相がテレビ番組で、「このままでは北朝鮮は滅亡への道をたどる」と話したことへの反論らしい。
さらにきのう24日には、朝鮮中央テレビは金正恩第1書記が軍の特殊部隊を視察したと報じた。北の最精鋭部隊だ。そこで、ソウルとおぼしき 巨大な都市模型を前に、「敵の特性を熟知してこそ閃光のように突入して心臓部を一撃できる」と訓示したという。金はピストルの撃ち方まで指導したというから恐れ入る。
軍掌握できない金正恩「国内向けに危機キャンペーン」
なぜかくも北の言動が過激になっているのか。コリアレポートの辺真一編集長は「日朝交渉、拉致問題解決に支障をきたしかねない」という。とくに特殊部隊は「日本的にいうなら特攻隊です。アメリカ、韓国が恐れている部隊で、実数は8~10万人でしょう。ソウル市街のこんな模型があることが不気味な脅しだ」と話す。
先日、合同演習を終えた米韓軍は北の不意打ちに備えた「共同対応計画」を策定したと発表したが、「挑発には決定的に対応」と上層部の狙い撃ちの可能性まで書き込んでいる。
井上貴博アナ「外交カードなのだろうが、偶発的に戦争になった例もあり、落とししどころは見えているのでしょうか」
池田健三郎(評論家)「外交カードというより、国内問題ではないですか。とくに軍に対してコミットしないといけない。苦労してるんだと思いますよ。うまくいっていれば遊園地視察の映像になるはず」
柿崎明二(共同通信編集委員)「アメリカに譲歩するには、軍を掌握しないとけない。だから内と外の2正面作戦を取らざるを得ない。大変ですよ」
北を攻めようなんて誰も思ってないのに、1人踊り続けるのも大変だ。