<横道世之介>
高良健吾コメディーで不器用な大学生活―吉高由里子に「いまからキスします!」いちいち宣言

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(C)2013『横道世之介』製作委員会
(C)2013『横道世之介』製作委員会

   『南極料理人』『キツツキと雨』の沖田修一監督が、吉田修一の小説を映画化した青春群像劇である。素朴で純粋、不器用ながらもまっすぐ生きる横道世之介(高良健吾)と友人たちとの日常を温かな眼差しで描いた。

   長崎の港町から大学進学のために上京してきた横道世之介は天真爛漫、人懐っこい性格で、入学式で出会った倉持一平(池松壮亮)や阿久津結(朝倉あき)らと早々に友人となり、ともにサンバサークルに入部する。

   その後も、同性愛者の加藤雄介(綾野剛)、年上で妖艶な雰囲気のパーティーガール・片瀬千春(伊藤歩)、お嬢様育ちの与謝野祥子(吉高由里子)ら、個性的な面々に囲まれながら、バブル景気に沸く80年代後半の東京の片隅で大学生活を謳歌する。

なにげない日常描いて飽きさせない沖田修一監督の独壇場

   映画化に際し、原作者の吉田から出された要望が「コメディを作ってください」だった。その言葉どおり、終始、映画館の中は小さな笑いに包まれていた。

   なにか大きな事件が起こるわけではない。サンバサークルで太陽の着ぐるみで倒れるまで踊ったり、同性愛と知らぬまま仲良くなった友人のマンションに入り浸ったり、彼女とキスするタイミングが計れず、「キスします」といちいち声をかけたりと、世之介の間の抜けた愉快なエピソードが全編にちりばめられている。

   この「なにげない日々のささやかな幸福」の映画化は、センセーショナルな事件や完全無欠のヒーローを描くよりよっぽど難しい。最後まで観客を飽きさせない沖田監督の技量は、過去の作品と同じく高く評価すべきだろう。

   いちばんの見どころは、お嬢様育ちで浮世離れしたガールフレンドの与謝野祥子と世之介のかけあい。素直で純粋すぎるからか、二人の恋はなかなか進展しない。滑稽で笑えると同時に、バブル景気の真っただ中にありながら、派手さとはまるで無縁に、裏表なくまっすぐお互いを愛する姿はちょっと懐かしくもうらやましい。

バード

おススメ度:☆☆☆

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