落語に「猫の皿」という演目がある。ずるい古美術商が茶店で猫のエサ用に使われている皿が柿右衛門であることに気づき、茶店のオヤジを騙して手に入れようとする噺だが、これは買った方も売った方もそんな大変な逸品であることをまったく知らなかった。
19日(2013年3月)に行われたアメリカの競売大手サザビーズのオークションで、223万ドル(約2億1000万円)で落札された器が、実はニューヨークに住む住人が6年前にガレージセールで3ドル(約290円)で買ったものだったというのだ。
中島誠之助「中国陶磁器の最高峰」現存するもう一つは大英博物館
器は直径13センチほどのもので、白色で内外にはのような模様があしらわれている。900~1000年前の中国・北宋のものだ。こういうものの価値はこの人に聞くしかあるまいということで登場したのが、古美術鑑定家の中島誠之助さんだ。中島さんは開口一番、「いい仕事してますねえ。文様がいいねえ。2億円じゃ安いよ」という。
「北宋定窯の白磁です。『神の品』と呼ばれる中国陶磁器の最高峰ですね。間違いなく本物です。自分でいいものだ、高いものだと思っているものはたいしたものじゃなくて、偶然ガレージセールで買ったものがいいものだったなんてことはあるんですよ。オタクにあるものも一度鑑定してもらったらいかがですか」
3ドルで買った人は自宅の暖炉の上に置きっぱなしにしていたが、最近になって専門家に見てもらおうと鑑定を依頼したところ、大変な逸品であることが判明。サザビーズに出品したが、専門家は20万~30万ドル(約1900万~2800万円)と値踏みしていた。しかし、セリが始まると4人の競り合いになり、値はどんどんつり上がってロンドンの古美術商が223万ドルで落札した。競り落とした古美術商は「この作品はあとひとつしか現存してません。それは大英博物館にあります。実にレアな器なんですよ」
日本でも古い仏像が14億円に大化け
キャスターの赤江珠緒「まさに、掘り出し物ですね」
吉永みち子(作家)「買っただけだったら、食べるとき使うとか置いとくとかで、そのうちなくなってしまったかもしれない。だしてみるものですねえ。それにしても、買ったこの人はすごくラッキーだけど、売った人は気の毒な感じがしますよねえ」
司会の羽鳥慎一が「もめ事になったりしてないのかなあ。ちょっと待ってくださいよォとか…」と心配すると、この話題を報告していた大西洋平アナが「ガレージセールっていうから、ご近所付き合いがあったりするかもしれないですよね」と、1000年前の名器、2億ドルという世界から、にわかに世知辛い話になった。
しかし、同じような話が日本にもあったという。大西によると、「長崎の学校の先生がお世話した中国人の人からお礼にもらった白いお皿が200万円だったとか、ある会社員が古美術商から80万円で買った古い仏像を、アメリカのオークションに出品したら14億円の値がついたということがあったそうです。運慶のものだったようです」という。
けさのスタジオは、「オーッ」という溜息と「うらやましい」という声ばかりだった。