小6男児(11)が担任の教諭から暴行を受けた直後に自殺したのを「事故死」としてきた兵庫県たつの市教育委員会が、19年後になってようやく「体罰による自殺」と認め、遺族に謝罪した。なぜ今ごろになって体罰を認めたのか。
裁判所は「因果関係」認定。それでも両親に謝罪せず
取材した岸本哲也リポーターによると、男児が自殺したのは1994年9月。担任教諭に宿題について質問したところ、「さっき言ったやろ」と頭と頬を数回叩かれ、帰宅した児童は自宅裏山で首をつった。
校長は当時、「学校として思い当たることはないし、叩いたことが直接自殺に結びついたとは判断できかねる」とし、市教委も自殺と体罰の因果関係を否定し、事故死とした。文科省(旧文部省)から求められていた小中学校児童生徒の自殺統計にも含めなかった。
担任は翌年の3月に暴行罪で略式起訴されて罰金10万円の略式命令を受け、市教委は処分を出したが、担任は訓告、校長は厳重注意という形式的なものだった。市教委の対応を不服とした児童の両親は、1996年9月提訴し、神戸地裁姫路支部は2000年1月に暴行と自殺の因果関係を認め、市に3800万円の支払いを命じた。しかし、市教委は事故死の扱いを変えず、父親によると「一切の謝罪もなければ、電話1本もなかった」という。
ところが、今月(2013年3月)に入って、事故死を「体罰による自殺」と認め、文科省への報告を訂正したうえ、市教委幹部が両親の元を訪れ謝罪をしたという。
いったいどんな変化があったのか。現在の苅尾昌典教育長は「社会情勢を見て、桜宮高校野や大津の事件をあらためて考え、少年の命をしっかり守る。そうしなければいけないと思った」という。文科省への訂正については「国の統計なので訂正できるとは知らなかった」と釈明している。
自殺もみ消しの教育長がいま市長
小倉智昭キャスターは「今になって事故死を体罰による自殺と訂正した真意は何なの」と呆れる。経営コンサルタントのシェーン・マクアードル川上は「弁明の中に少年の命の話はいっさい出てこない。聞いていて非常に不愉快ですし、許せない」と怒った。
教育委員会が急に扱いを替えのには裏があった。岸本が「児童が自殺した当時の教育長は今の市長なんです。取材を申し込んだが、多忙を理由に断られました」と報告した。番組では触れなかったが、現在の市長は西田正則氏で、旧龍野市教育長、市助役などを経て1998年に旧龍野市長に初当選し、合併でたつの市になって初代市長に就任した。現在2期目で、今年11月12日に任期満了を迎える。ひょっとしたら3期目の市長を狙い、選挙で不利になるのどのとげを、いまのうちに抜いておこうとしたのかもしれない。