エステー鈴木喬会長「内需型の大衆消費財産業は円安直撃。賃上げしたいが苦しい」
安倍首相は企業に賃上げするよう「お願い」をしているが、2013年度の組合員の賞与を2割カットする方針を固め、労組側に協議を申し入れたパナソニックなどは「国賊」呼ばれかねないと心配になる。本心は「賃上げはしてやりたいが、本音では」という企業が多いのだろう。『週刊文春』で家庭用消臭剤のトップメーカー「エステー」の鈴木喬会長がこういっている。
<「(中略)今回のアベノミクス効果で円安になると、原油や素材価格が高騰しますが、ドラッグストアでは値上げはできません。だから、我々のような内需型の大衆消費財産業は一番苦しくなります。そういう状態で何とか社員の雇用を確保していかなければならない。賃上げは本当に悩ましいんです」>
続けて週刊ポストは、3月8日に発表された内閣府の「景気ウオッチャー調査」もおかしいというのである。今回の調査結果(2月分)では「現状判断DI」が前月比3・7ポイント上昇の53・2、「先行き判断DI」が前月比1.2ポイント上昇の57.7となったため、景気の先行きを示す指数は2000年に調査を始めてから最も高い数字になったという報道が多く見られた。だが、これは役所と記者クラブの「コンビネーションプレー」だったというのだ。
<今回の調査結果を注意深く読むと、手放しでは喜べない日本経済の実態が見えてくる。
25ページにわたる調査結果(全体版)の最終頁には、『参考』として『景気の現状水準判断DI』という指数が掲載されている。そこには『景気の現状をとらえるには、景気の方向性に加えて、景気の水準自体について把握することも必要と考えられる』との記述があるだけだ。
内閣府に問うと、「『現状判断DI』は3か月前と比べて景気がどう変化しているかを質問した数字で、『現状水準判断DI』は、現在の景気について尋ねた数字です」と説明する。
つまり、「現状水準判断DI」こそが実体経済の実感を示している数字なのだ。この数字は今回調査で「45・9」と50を大きく下回り、いまだ過半数が「景気が悪い」と判断していることを示している。その数字を最後に「参考」として載せるのではなく、強調することこそ政府の義務というものだ>
さらに、つくられた賃上げラッシュの裏で「首切り自由化法」とでもいうべき案が練られているともいうのである。<さる3月6日、産業競争力会議の「雇用制度改革」分科会の第1回会合が開かれた。そこで議論の中心になったのが、経済界の悲願である「金銭解雇ルール」の創設だ。
「日本では企業が社員を整理解雇する場合には4要件と呼ばれる厳しい制約がある。産業競争力会議でテーマになっている金銭解雇ルールとは、企業が『転職支援金』などの名目で一定の金額さえ支払えば自由に社員のクビを切れるようにするもので、実現すれば、サラリーマンはいつ会社から『辞めてほしい』と通告されるかわからない不安にさらされることになります」(ジャーナリスト・溝上憲文氏)>(週刊ポスト)