アレルギーも移植拒絶反応も抑えた!画期的「免疫寛容」で難病治療に大きな突破口

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   ばい菌などの異物が入ってきたとき、これをリンパ球が攻撃するのが免疫の仕組みだ。その司令塔となる免疫細胞が誤作動したり暴走するとアレルギー症状に襲われる。卵や乳製品を異物として攻撃するのが食物アレルギー、花粉では花粉症、自分の体を攻撃するのがリューマチ、臓器移植では拒絶反応として現れる。これまで、 なぜ免疫細胞がおかしくなるのかがわからず、免疫を制御できるとは考えられてこなかった。

   ところが、それがどうやら可能で、しかも、日本発の医療革命になりそうだという。「免疫寛容(めんえきかんよう)」といって、免疫細胞を抑制し て攻撃をやめさせるのだ。北海道大学病院の臓器移植の分野で結果が出ていた。

免疫細胞を混ぜ合わせて「悪さしないよう教育」

   北川正貴さん(55)は肝臓がんで、昨年1月(2012年)に余命3年と宣告された。7月に長男(22)の肝臓の一部を移植した。拒絶反応を抑えるために免疫抑制剤が欠かせないが、抑制剤は一般の免疫機能まで落としてしまうため、ウイルスや細菌による感染症、合併症が怖い。そこで、免疫寛容が行われた。

   北川さんの血液から採取した免疫細胞を息子の免疫細胞と混ぜ、培養したものを再び北川さんに戻す。すると、移植した息子の肝臓を免疫細胞が 「異物」として攻撃しなくなる。「免疫細胞を教育するのです」という。手術から7か月後、抑制剤を3分の2に減らした。それから1か月経ったが、拒絶反応なく肝臓も安定、毎朝4キロの散歩もできるようになった。

   福岡で畳店をやっている国崎敏明さん(65)も2年前、肝臓がんで余命3年といわれたが、免疫寛容の結果、免疫抑制剤をやめて半年になる。「いまのところ完璧」と本人はいう。同じ治療は10人に行われ、4人が抑制剤をやめている。6人は経過を観察中だ。北大病院の藤堂省・特任教授は「世界初の成功例になる」という。

   20年来この研究を続けてきた免疫学者の奥村康・順天堂大特任教授は、「リンパ球を教育すると司令塔も学ぶ。いまはまだ抑制剤をやめると200日くらいだが、これが1年、2年経ってどうなるか。おそらく1、2年のうちに世界に広まると期待しています」という。腎臓など他の臓器でも試みられていて、成果が出ているという。

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