「奥さんが非常に喜んでくれると思う」
自動車業界の従業員は笑顔で語る。一方、町工場では「日本人の何%の人がそういう恩恵を受けられるのか」と厳しい表情だ。きのう13日(2013年3月)の今春闘の集中回答では、自動車業界を中心に一時金(ボーナス)の満額回答が相次いだが、中小企業への波及にはまだ時間がかかりそうだ。
トヨタ賞与200万円超え、電機は定昇維持、コンビニ年収アップ
今年の春闘は安倍晋三首相の財界に対する異例の賃上げ要請から始まったといってもいい。「業績が改善している企業においては報酬の引き上げを検討していただきたい」と申し入れ、その効果か、きのうの集中回答でトヨタ自動車は5年ぶりにボーナスが200万円を超え、ホンダや日産自動車も満額で応じ、電機業界でも定昇が維持された。これに先立ち、コンビニ業界のローソンやセブン&アイ・ホールディングス、ファミリーマートも年収アップを決めている。
獨協大学の森永卓郎教授は「一見すごくいい結果が出ているようだが、さまざまな格差が出ている春闘だと思います」と見る。「高額商品は売れ始めているが、スーパーマーケットの売り上げは若干落ちている。お金持ちだけがよくなっても全体の消費を引っ張れなません」と冷ややかだ。
これに対し、駒沢大学の飯田泰之准教授は「ここで格差の問題を持ち出すのはきわめてセンスが悪い」といい、春闘の成果は全体の賃上げにつながると言う。「中小企業の給料は下がっていないので、一部の人が豊かになると、増えた分の所得がまたどこかに回っていく可能性は十分ある」と前向きな評価だ。
文
一ツ石| 似顔絵 池田マコト