ニワトリと卵じゃないが、アベノミクスと春闘が微妙なからみをみせている。安倍首相の「給料を上げて」という要請に答えたのか、春闘が例年にない動きをみせている。自動車、電機などの金属労協本部ではきのう13日(2013年3月)、ホワイトボードに「ボーナス満額回答」がずらりと並んだ。トヨタ、日産、本田…輸出企 業にこのところの円安がいかに大きかったかがわかる。
経団連の米倉弘昌会長は「総理からは、企業の業績が改善したところは報酬の引き上げの取り組みなど検討してほしいという要請があって、まさにそれに合致した結果となりました」と満足げにいう。菅官房長官も「まさにアベノミクス。報酬が増大し、雇用が増大するのがわれわれの目標のひとつですので、次から次と出始めているので歓迎したい」という。
トヨタ城下町の居酒屋、レストラン、タクシーお裾分け期待
アベノミクスは金融緩和、財政出動、成長戦略の3つによるデフレ脱却というが、まだ予算も通っていないし、何もしちゃあいない。安倍が選挙中に口走った「日銀にお札をじゃんじゃん刷ってもらって」というのに、市場が勝手に反応したという面が強い。
しかし、現に円が安くなり株が上がり、青息吐息だった自動車、電機産業が決算見通しを大幅に上方修正していることから、それぞれが相乗作用で転がり出していることがわかる。とくに円安だ。輸出企業にとって「10円」がこんなにも違うのかという驚き。これまでの円高がいかにきつかったかがわかるが、同時に、輸入への影響も相当なものになるはずだ。
トヨタの企業城下町、豊田市のタクシー運転手は「上向いてきたのは確かだよね。ほんの少しだけど」と話す。豊田市は10万人以上が製造業に従事していて、うち85%が自動車製造業だ。トヨタの動向は街を左右する。給料が上がれば街もうるおう。だから、レストランでも居酒屋でもトヨタのボーナスのニュースは大ニュースだ。
円安のツケ「物価値上がり」心配する町工場従業員
しかし、下請け、孫請け、ひ孫請けとなると、「こちらの給料アップはまだまだ先だ」という。それより心配は「ガソリンが高くなる。食品、小麦やなんかが高くなること。生活費自体は上がってきている」(トヨタの下請け社員)という。トヨタの従業員でも非正規は「関係ない」と冷めている。
中小の経営者も「まだまだ暗いトンネルの中」という。内部留保の多い大企業と違って、社長、専務の給料を削って従業員の給料を維持しているのが現状だ。「春闘は無関係。どこまで波及するか」という。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「去年に比べたら明るくなった」という。
司会のみのもんた「春闘ってあったんですかあ」
荻原「ベアの方は渋いんですが、ボーナスは一時金ですから、何とか出しましょうとなった」
一覧表にしてみると、なるほど壮観だ。自動車は4社がボーナス満額。流通・小売がすごくて、ローソンが「子育て世代の年収増」、セブン&アイとニトリが「ベア増」、ファミリーマートが「年収増」。電機は明暗が分かれたが、リストラ中だけにしかたがない。
みの「デフレ脱却までいきますか」
荻原「いまは一部大手だけ。中小とか非正規にまでいってない。アベノミクスが深化してそこまでいくのかどうか。とくに働く人の4分の1が非正規といわれますが、6月に出る成長戦略がこの部分にまでいくものならアベノミクスも評価されると思います」
みの「物価が上がるんだよね」
荻原「給料とリンクされないといけない」
物価には消費税と円安がある。その円安の影響はもう始まっている。