行天(松田龍平)のユル~イ感じが何ともいえずいい。コンビを組む多田(瑛太)との対比が絶妙だ。画面の中で2人が動いている姿を見るだけでも、このドラマを見る価値がある。
松田はCMでロバート・デ・ニーロと共演しているが、つかみ所のない人を食った感じはドラマの行天と変わらず、デ・ニーロに圧倒されたりしていない。所を得れば持ち味がみごとに生きる。
「まほろ駅」モデルは東京の田舎・町田
ドラマの舞台となっている「まほろ」は東京都町田市がモデルである。「小田急線で1度神奈川県を走ってから、また東京都に入る」というからすぐわかる。さらに言えば、もう1駅走るとまた神奈川県になる。
ン十年も前になるが、町田の1つ先、神奈川県の相模大野に4年ほど住んでいた。休みに新宿まで出るのは面倒なので、映画を見たり買い物をしたりはもっぱら町田だった。東京都といっても田舎町で、昆布の束や鰹節を積み上げ、豆類を量り売りしている古い乾物屋があったりして面白かった。
面白いといえば、タイトルバックは松田と瑛太が商店街をブラブラ歩いている映像だが、2人以外はみんな後ろ向きに歩いている。よーく見ると、2人の歩き方がぎくしゃくしている。みんなの方が普通に歩いていて、松田と瑛太が後ろ向きに歩いている映像を逆回しにしているわけだ。でも、子供と絡むところなど、どうやって撮ったのかと思うほど自然だ。試しに、自分でも瑛太みたいにポケットに手を突っ込んで後ろ向きに歩いてみた。逆回しで確かめられないのが残念だが、歩けないことはない。
むさ苦しいコンビ絶妙…味わい深い話に思わずホロッ!
便利屋をやっている冴えない男が瑛太演じる多田である。いつも貧乏で、仕事場に寝泊まりし、カップラーメンをすすっている。そこに居候している行天は元ホームレスというのだから、2人のむさ苦しいことといったらない。そんな2人が面倒臭そうに仕事を受けるうちに妙なことに巻き込まれ…という展開の1話完結(たまに2話もある)で、町田ローカル色の濃いコンパクトな話が味わい深い。けっこうホロッとしたりして。
なお、4月からこのドラマがそのまま劇場公開されるらしい。好評だから映画版が作られるというのはよくあるけど、そのまま映画館で上映というのは珍しい。でも、もともと映画から生まれたドラマだ。2人の過去が気になる人は映画「まほろ駅前多田便利軒」を見てね。(テレビ東京系金曜深夜0時12分)
(カモノ・ハシ)