あまり大きく取り上げられない日本アカデミー賞受賞式(2013年3月8日)で、小娘を手玉に取った老練な女優が大きな話題になった。最優秀主演女優賞発表では売れっ子の女優たちが並び、ひときわ華やかな雰囲気のなか、8か月ぶりに姿を現した沢尻エリカ(26)が注目を浴びた。その沢尻と争って最優秀主演女優賞に輝いたのは樹木希林(70)だった。司会者に「喜びの一言を」と促され、こんな挨拶に会場は静まりかえった。
「私ね、冗談でなく全身がんなの。来年の司会の仕事は約束できないんです、本当に。名誉はいらなくて、振込みだけはいただいて…」
このひと言で翌9日のスポーツ各紙の紙面トップを独占してしまった。
「ああでもしなきゃ、全部独占されちゃうじゃない」
本当に全身がんなのか。2003年に網膜はく離で左目失明、04年には乳ガンで右乳房の摘出手術をしている。「トクだね!」が樹木を直撃した。
――転移が進んでいるのか心配で…
「心配なことないでしょ。他人のことなんだから」
――お体のほうは深刻なのではないですか
「ずっと全身がんですから、何年も」
――何年前から?
「忘れたな。ずっと支障がありましたから…」
―あまりにもショッキングだったことなので驚きました。
「ああでもしなきゃ、沢尻エリカ様に全部独占されちゃうじゃない」
小倉智昭キャスターの「ハイ、勝負あった。希林さんの勝ち」にスタジオは爆笑となった。芸能リポーターの武藤まき子によると、「乳がん手術の後も、次から次に仕事のオファーがあるようです。体調管理は万全だし、『(風呂屋の)番台のおばさん役があったら私出ますから』と言っていましたよ」という。
したたかな熟女にみんなしてやられた。
文
モンブラン| 似顔絵 池田マコト