津波で何もかも押し流された岩手県陸前高田市で、凛として立っている復元された「奇跡の一本松」のすぐ横に岸本哲也レポーターがいた。周囲に工事用のやぐらが組まれている。「枝葉の角度が違うのではないか」という指摘があり、修正工事を行うためで、今月22日(2013年3月)に予定されていた完成披露も延期されたという。
「観光資源になる」「生活復興が先だ」
高さ約27メートル、幹の部分は芯をくり抜きカーボン製の心棒が埋められ、上の枝葉はすべてレプリカだ。復元費用は1億5000万円。すべて寄付で賄うことになっており、すでに8700万円が集まっている。
ただ、一本松の復元には地元ではいまだに賛否両論がくすぶっているようだ。「復興のシンボルになる」「将来の観光資源になる」という賛成意見、「松の復元はいいが、まず自分たちの生活や街の復興が先だ」という反対意見だ。
岸本によると、「市は計画通りに復興は進んでいるというが、住民は自分たちが思い描いている復興にはいたっていないと考えている」という。たしかに、大震災から2年が経過したのに、奇跡の一本松の周囲には住民たちの笑顔もなければ会話も何もない。
接ぎ木の2世はこの2年で12センチに成長
そんな寂しい中で、岸本は「松の接木に成功しました」と「松原を守る会」から借りてきた接木を披露した。接木を行ったのは2011年5月で、当時は3センチ足らずだったのが1年8か月で12センチまで成長し、強い生命力を見せている。
岸本「これが一本松ぐらいに成長するには100年はかかるそうですが、われわれの時代ではなく、曾孫や玄孫の時代になっているでしょうね」
そのときには、陸前高田のシンボルで、日本百景にも数えられた「高田松原」も復元されているかもしれない。