被災者に広がる「中折れ現象」暮らし取り戻すメド立たず生きる意欲低下

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   東日本大震災から2年、NHKが被災者に7回目のアンケートを行い、52の市町村の1006人が回答した。7割がこれまでにも答えていたから、変化も読みとれたのだが、その変化は意外なものだった。「前のめりに動けなくなってきた」(大槌町・男性50代)、「現在電池切れ状態」(いわき市・40代小売業男性)、「ただただもどかしい」(宮古市・50代女性)…。そしてだれもが「あっという間の2年だった」という。

   「復興は進んでいるか」の問いに、「進んでいる実感が持てない」58.5%と「想定より遅れている」28.5%を合わせると87%にもなる。1年前は82%だった。増えているのだ。復興の中心にいるはずの40~64歳の4割が「気が沈みがち」、3割が「意欲がわかない」と答えている。2年たってなおほとんどが仮の生活だ。その不安と焦燥感がにじんでいた。

   「迷路を地図なしですすんでいる感覚」と書いたのは宮古市田老地区の菓子舗、田中和七さん(58)だ。うずまき型のかりんとうが名物の90年続く老舗3代目である。津波で家も店も失ったが、商店街のリーダーとして仮設の店で頑張ってきた。補助金と借金で工場も作った。しかし、いま思わぬ事態の直面していた。「ここに留まる」という人が45%しかいないのだ。人口の流出が予想を上回る。仮設の店を畳んで離れる人も出てきている。「ここまで深刻だとは…。夢だけでは前へ進めない」

1年前より増えている「家族関係が悪化した」

   もうひとつの変化は家族だ。同じ質問の1年目の回答と2年目では大きな違いが出た。「会話が減った」が14% から 22%に、何でも話せなくなった」が7%から13%に、「一緒にいる時間が減った」が13%から19%に、「無関心になった」が4%から7%に、「言い争いやケンカが増えた」が11%から13%へと、悪い方に増えているのだ。

   気仙沼の吉田美奈子さんはアンケートに「楽しかった思い出」を書いていた。漁業監視船勤務の夫と子ども5人が一緒だった。いま夫は他県が拠点、長男、次男は学校に近い仮設に、吉田さんは幼い3人の子と市営住宅に住む。もう一度もとのところに家を建てたいのだが…。頭痛薬が欠かせなくなった。

   「家族関係が悪化した」と答えた人の半数は、体調を崩しているという。被災者の心身の問題を阪神淡路大震災から見ている兵庫県立大の木村玲欧准教授は、住まいと人とのつながりがポイントだという。どちらもうまくいかないと意欲の低下として現れる。「中折れ現象」というのだそうだ。「復興とは日常生活を取り戻すことだ」と木村准教授はいう。

   アンケートでは、「復興が実感できない」と答えた理由の一番が「住まいの見通しが立たない」で52%、次いで「堤防や漁港の復興が進んでいない」33%、「人が戻っていない」23%だった。

   避難先から戻るか戻らないかでは、「戻る」が35%に対して「戻らない」が65%と2倍近い。うち3分の2(全体の40%)が「戻りたいけど戻れない」だった。どこをとっても、日常が戻っていない証ばかりである。

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