「もし、私が総裁に選任されたならば、この2%の物価目標を1日も早く実現することが何よりも重要なことになる」
次期日銀総裁候補の黒田東彦アジア開発銀行総裁(68)のひと声で株価は上がり、円相場は安値に振れる。選任前から大変な影響力だ。きのう4日(2013年3月)、衆院議院運営委員会の所信聴取で「物価目標をできれば今後2年で達成したい」と意気込んだが、果して実現可能なのか。
エコノミスト「ハードル高い。景気過熱感でないと達成難しい」
就任前から大見得を切ったといってもいいのではないか。「デフレ脱却に向けてやれることはなんでもやる」。市場はすぐさま反応し、午前9時40分の発言を受け、日経平均株価は10分後に約4年5か月ぶりとなる1万1700円台を回復した。円も一時1ドル93銭70銭台まで下落した。日銀総裁人事は衆参両院の同意が必要だが、こうした市場の好意的な受け止め方に野党第一党の民主党も反対は難しいとの見方が広がっている。
問題は実現性だ。クロトン(黒田)は日本維新の会の中田宏政調会長代理が「(2%の物価目標は)2年で達成できると確認してよろしいのか」と質問したのに対し、「15年続きのデフレを打破することは大変なことであることも事実。2年というのは1つの適切な目途と思うが、できるだけ早期に達成するよう全力をあげる」と答えた。具体的な方法については「いちばん自然な金融緩和は(長期)国債の購入を増やすことだ」と述べた。
政治アナリストの伊藤惇夫は「2年を目途」に関して、「達成できるとは現状では言い切れないですね。1990年代から始まっていますから、今までできなかったものがすぐにできるのかどうか」と疑問を投げかける。
第一生命経済研究所主席エコノミストの嶌峰義清も「ハードルはとても高い。人を雇いたいのに人が全然いない、賃金がどんどん上がっていくといった景気の過熱感が出る状態にならないと達成は難しい」